零の旋律 | ナノ

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「で、お前何者なの?」
「……カナリーグラスの幹部よ」
「カナリーグラス? あぁ、あの暗殺者組織か。どーりで強いと思った。で名前は? カトレアしか聞いていないんだけど」
「リアトリス。リアトリス・リニよ。始末屋」
「アーク・レインドフな」
「……それはそうと、始末屋の所でメイドをするのは構わないけど一つ問題が」
「何? あぁ、組織が邪魔か。なら壊滅させるか」

 さらりと恐ろしいことをいうアークにリアトリスは乾いた笑いをするしかなかった。
 『カナリーグラス』は裏社会でも有名な暗殺者組織だ、それを壊滅させるかと簡単に言われるとは思ってもみなかったのだ。

「……今、この街にはgTがいるし、大半の暗殺者はこの街に集結しているから殺せば組織は壊滅するけど……」
「なら、やればいい。俺は一度メイドにすると決めた奴を手放すつもりはないからな」

 アークの手がリアトリスの顎を掴む。真っ直ぐにリアトリスを捕える瞳は何処までも強気だ。
 アークがリアトリスをメイドにすると決めた理由は面白いからだ。自らの命綱である武器を簡単に手放してまでカトレアを守る意思を見せた時、メイドにしたいと思えたのだ。
 その彼女がメイドになるといった今、手放すつもりはない。

「よし、じゃあ行くか」
「……わかったわ」

 ――カトレアを守るためならば、是でいい。どの道、始末屋に負けた時点でノハとの約束は破ることになるのだから、私たちに組織で安全な場所はない。
 気絶しているカトレアを屋敷内のベッドに寝かせて、リアトリスが心配しないでという置手紙だけを残してそばを離れる。屋敷の外に出て、ノハが待っている場所へ歩き出した。

「所で、なんでキスをしたの?」
「あー何となく」
「何、アークはそういった性格?」
「いやファーストキスだったりします」
「じゃあなんでしたのよ!」

 リアトリスは状況を忘れて叫んでいた。


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