Y すでに、依頼は完了したから、後は屋敷の外に出て、帰宅し依頼主に完了した胸を伝えるだけで済む。 街灯が深夜の暗がりを照らす屋敷の外に出た時、自分の服に返り血がついていたことに僅かながら殺し方に後悔した。 だが、そんな後悔は一瞬で消える。意識は外に出た時、屋敷に向かってきている存在に気がついたからだ。外に出た以上、ランプの必要性もないから思う存分武器として活用できる。 「誰……」 屋敷に到着したリアトリスは眼前に青年と少年の中間をさまよう風貌した人物が悠然と歩いているのに驚く。殺害リストには入っていない。予想外の敵だとすぐさま認識する。 血は服に付着しているが、それがその人物自身の血ではない。服も一糸乱れない。なかなかのやり手だとこれまでの経験から判断する。――それが、アーク・レインドフと、リアトリス・リニの出会いであった。 「ん? 俺はアークだけど、お前らは?」 飄々としながらアークは名乗る。アーク、とリアトリスは頭の中でその名前に引っ掛かりを覚える。だが、回答を導く前に、暗殺者の一人がリアトリスに耳打ちをしてくれた。 「彼は始末屋レインドフ家の人ですよ」 「あぁ……あの始末屋ね」 淡々とした口調でリアトリスは返答する。ノハが以前語っていたことを思い出した。 始末屋アーク・レインドフ。噂では、彼は仕事中毒で戦闘狂だという。 始末屋としての腕前は確かで、今まで受けた依頼の殆どを達成していてその確かな腕前で依頼がひっきりなしに来ているそうだ。彼は仕事に対するプライドや姿勢は高く、依頼主の情報は一言も漏らさないことから、隠匿するため利用されることが多かった。 「始末屋、お前の目的は何」 「それは言えないな」 「……では、一つ問うけど。屋敷の中に五人組がいなかった?」 「あぁ、襲ってきたから殺したけど、お仲間か? そういや衣装が似ているな」 「そう――」 リアトリスの瞳は徐々に人を殺すために変化していく。何者たりともリアトリスの意思を覆すことが出来ないような強固な力。 「あの男、殺すよ」 リアトリスの命令に暗殺者たちは頷いた。 [*前] | [次#] TOP |