U 「何って、どう考えたってカトレアが使い物なることはないだろう? だったら別の所へ売った方がいい」 歩みを止めて暗殺者の一人が平然と答える。壊れているかのように感情は一切籠っていない。 「そ、そんな!」 呆然とするリアトリスに別の暗殺者が耳打ちする。 「仕方ないだろ、お前と違って――使えないんだから。だけど、ま、顔は可愛いし」 「だからさ――」 別の暗殺者がさらに耳打ちする。そうするうちにリアトリスの顔はどんどん真っ青になっていく。 「というわけで、連れていくわ」 最期に別の暗殺者が――四人いたうちの最期の一人が、これ以上リアトリスに告げることはないとカトレアを連れて行こうとした。 「待って! だったら!」 リアトリスの瞳は決意に満ちていた。だからこそ、その暗殺者は歩みを止めた。 「だったら、私がカトレアの分もやる! カトレアのやるはずだったことを私がやる! だからカトレアは連れて行かないで!」 何を馬鹿なことを、暗殺者たちが冷笑しながら言葉を発するよりも早く 「あはははははっ」 カトレアの腕を握っていた暗殺者が腹を押さえながら笑っていた。 「面白い」 暗殺者は、カトレアにリアトリスの方へ戻るように手で払う。 「もし、それが達成できなくなった時は、カトレアは別の場所へ売らせてもらう。それでもいいんだな?」 「ちょ!」 「え!?」 「ノハさん!?」 何を言い出すんだと、その暗殺者――ノハと一緒に行動をしていた他の暗殺者たちは驚愕する。 「別に、リアトリスが二人分の働きをするっていうんなら、問題はないはずだ。なぁ?」 歪な笑みを受けて、リアトリスはしっかりと頷いた。それでカトレアと一緒に入れるならカトレアが助かるなら構わない。揺らがない瞳を見て満足そうに頷いてからノハは他の暗殺者を引きつれてその場から出て行った。 「ノハさん、いいんですか!?」 「構わないさ。それに――そんな制約があった方がいい暗殺者が育つかもしれないんだ」 「……」 「上には僕が言っておくよ。リアトリスは僕が育てよう」 「ノハさんがそういうなら、私たちは反対しませんが」 「じゃ、そういうことで」 ノハの歩みを、三人の暗殺者たちは見送った。ノハは暗殺者の中でも屈指の実力をまだ少年でありながら有する逸材であった。事実、少年の域をまだ脱しない年齢ながらも歳不相応の雰囲気を醸し出すだけでなく、実力も申し分なくすでにbSの地位にいるのだ、格下である三人がとやかく言える権利はなかった。ノハは赤紫色の髪を揺らしながら人差し指を唇にあてる。 ――面白くなりそうだ。 [*前] | [次#] TOP |