零の旋律 | ナノ

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 情報収集に走り回った二時間が酷く長く感じられた。目ぼしい情報があったかと言えば、答えは是だ。だが、レインドフ邸に戻ってきて目にした光景はシャーロアを動揺させた。戸惑っているうちにアークとヒースリアが戻ってきたのは幸いか。

「……リィハの馬鹿が」

 アークの舌打ちがシャーロアの耳に確かに聞こえた。そこには解けた縄と昏倒するハイリの姿があった――リアトリスはレインドフ邸の何処にもいなかった。
数分後、目を覚ましたハイリが真っ先に目にしたのは、ヒースリアの引き攣った笑顔と剣呑とした瞳だった。思わず此処は夢の中だ、もう一度夢を見ようと思ったほどに。

「リィハ、お前何リアを逃しているんだよ」

 ヒースリアの口調にハイリは益々顔が引きつる。本来の口調を知らないわけではないが、ハイリにとって本来の口調でいるヒースリアは普段以上に恐怖の対象だった。

「……いや、リアが痛いって痛そうにしているから酷いとこだけ治して縄を少し緩めて……」
「はぁ。何変なところで善人発揮してんだよ」

 アークも額に手を当てながらあきれ果てる。今回は治療費をタダにしたのが裏目に出たかとさえアークは思う。

「まぁ逃がしたものをどうこう言ったって仕方ないか。シャーロア、目星は?」
「あ、うん。街外れの廃墟をノハって人物が数日前に買い取ったみたいだよ」
「私が掴んだ情報とも一致しますね」
「ならそこにいることは間違いないな」
「ヒースも掴めていたんだ」
「えぇ、まぁ私の場合は情報というほどでもないですが」

 にっこりとほほ笑むヒースリアに大した警戒心も抱いていないシャーロアはそっかと納得する。

「じゃあ、そこに行くか。……リィハやシャーロアはどうする?」

 それはついてきても構わないということ。

「行く」
「俺も行くよ」

 例え足手まといになったとしても、このまま待っていることは出来なかった。ハイリはリアトリスを逃がしてしまった負い目もある。

「なら行くか。ヒース、わかっているよな?」
「えぇ、勿論」

 そう言ってヒースリアだけは先に進んでいった。驚く表情の二人にアークはヒースリアだけは別行動させる胸を伝えた。その方が、効率がいいことをアークとヒースリアはふんでいた。何故ならば――ノハは、ヒースリアのことを知らない。それが最大の勝機。


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