零の旋律 | ナノ

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 二時間捜索したのち、ヒースリアとサネシスは待ち合わせ場所である喫茶店の中に入る。こぢんまりとした喫茶店で、客は自分たちを含めて四組しかいない。集合場所にはもってこいな場所だった。自分たち以外誰もいないと、会話が筒抜けになる可能性もあるし、人が多いと正体を見破られる危険性が高くなる。
 既に席についていたアークとラディカルは一番奥の端でお茶を飲んでいる。いらっしゃいませと営業スマイルを向けてくる店員に気がつかれないようサネシスは不自然にはならない程度にフードの先を掴んで深く被る。

「何か目ぼしいのはあったか?」

 やや乱雑に椅子を引いてから、サネシスはどっしりと座ると、開口一番に情報を求めた。その隣にせっかちですねと余計なひと言を加えてからヒースリアが座る。サネシスはヒースリアを一瞥してから視線をアークへ移す。

「大体の原因はわかったが、二時間じゃ場所までは無理だった。そっちは?」
「場所の方はわかった。しかし大体の原因とは?」

 ヒースリアとサネシスが選んだ方針は、何処かに魔法封じの要となる何かが存在しているのではないか――ならばそれを探し出そうとなった。その結果、ある場所に不思議な物を発見し――発見したのはヒースリアだったが――目星を付けた。

「大体の原因ってのは、聞いた話によると魔法が使えなくなる一週間くらい前に、此処に入ってくる帝国の人を見かけた奴らがいた。その後はぱったりと姿を見せていないらしい」
「帝国――ヴァイオレット。アネモネ」
「本人たちかは知らないが、だがどちらにしても関係者にあることは間違いないだろう。秘密裏にこの場所に来たらしい」
「何故、そんな情報を入手出来た?」
「此方にも色々と情報を仕入れる先はあるもので」

 ニヤリと笑みを浮かべるのがどれほど残酷さを含んでいるか、この男は気が付いていないのだろうか、サネシスはそう思えてならなかった。心なしラディカルの顔が引きつっている。

「ヒースはその辺あたらなかったのか?」
「……あたりたいとも思いませんね」

 アークの問いに、ヒースリアはやや苦渋の表情をしてから首を横に振る。今の自分がそれらの場所に赴くことは想像しただけで嫌になる。

「ん? どういうことだ?」

 アークとヒースリアのやりとりの意味がわからないサネシスが詳細を求めるが

「いや、その辺はヒースの方が詳しいから」

 とだけしか返答はなかった。

「私は主と違って、結果がどう転ぼうが構わないもので」
「……本当にこいつ殺したいわ」

 サネシスは顔を引き攣らせながらそう答える。紅茶が僅かに波をたてていた。


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