零の旋律 | ナノ

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「あぁ、知っている。ヴィオラから聞いた」
「ヴィオラ……あいつとまで面識があるとは驚きだな。だが、ヴィオラが口走るとは到底思えないが?」
「元々は帝国の研究者であるヴァイオレットと軍師のアネモネが『魔術師』の単語を言っていたんだ。で、その後は色々あってヴィオラから聞いた。『魔術師』は魔石を扱わずに魔法を扱える『人族』を差す言葉なんだってな」
「はぁ!? どういうことっすか!?」
「主、それは……」

 『魔術師』を知らないラディカルと普段は驚きを余り表に出さないヒースリアまでもが驚いていた。

「あぁそっかヒースには言っていなかったか。あの時いなかったしな」
「帝国に、足を運ぶつもりはありませんから。で、どういうことなんですか? そこの魔族も深く知っていそうですが」
「『魔術師』に関しては深く教えてやるつもりはない。兎に角、魔石を持ちいらずに魔法を扱えるのが魔術師であり、厳密にいうと、それは魔法ではない」
「魔法ではないってーと?」
「厳密には魔術師の扱う魔法は『魔術』と呼ばれる。そしてそれは魔法とは似て非なるものだ」

 似て非なるもの、それでアークもヒースリアもピンと来た。

「似て非なるもの、同一ではない。つまり魔術師は魔法――いや魔術を使えるってことか」
「恐らくな。確認したわけじゃないから確かなことはいえないが、この状況で人族、魔族以外に魔法を封じてそれを利益とするのは『魔術師』くらいしかいない。そうと考えればこの状況にも納得がつけられる」

 そこまで聞いてようやっとラディカルは理解する。しかし、解せなかった『魔術師』とは何者かが全く持ってわからない。この世界で魔法を扱えるのは魔族だけであり、その魔法を利用して魔導を人族が扱えるだけだ。

「成程。しかし、それを俺たちに教えてもいいのか?」
「仕方ないさ。それに俺にとってはアンタがもたらした情報――アネモネとヴァイオレットが魔術師を知っていたことの方が重要だ」
「そうなのか」
「あぁ、そうだ」

 獲物を見定めたような鋭い瞳、獲物を見つけた喜びで笑みが抑えられないような表情をサネシスはする。

「魔術師を知っている人族なんて――そもそもレス以外に存在しなかったはずだ。その
言葉を知っているだけで意味合いは大きく変わって行くさ」
「あーじゃあもう一つ。ヴィオラはアネモネとヴァイオレットに対して宣戦布告していたぞ。俺が殺すって」

 まずますサネシスの笑みが深くなる。ラディカルは協力関係を結んでいなかったら脱兎のごとく逃げたかった。
 アークやヒースリアだけでも、物騒なのに、その上さらに物騒人口が増えても嬉しくもなんともない。

「アーク・レインドフ。少しの間協力してくれないか」
「問題はないさ」

 ヒースリアだけがラディカルと行動をするのを露骨に嫌な表情をした。
 サネシスは人族が嫌いだ、皆殺しにしても問題はないと思っているがアーク・レインドフという青年に限っては殺すよりも協力し合う方がよほど効率的に事件の真相に迫れると判断した。利害関係を考えて人族と行動を共にするくらいのことはする――最も是が初めてだ。一方的にお願いをしたこともあった。
 サネシスは内心笑う。ここ最近で二度も人族と自分から関わることになるとは予想外だったのだと。


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