零の旋律 | ナノ

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「いや、別にどっちでもいいし。邪魔をすれば殺すだけだから人族も魔族も関係ないだろ」
「あっそ、変な人族だ」
「アンタは俺を殺したいみたいだけどな」

 アークは苦笑する。サネシスはどう見ても強い、熟練した強さを誇るからこその余裕を持っていた。だからこそアークは依頼がなければ――もしくはサネシスが元凶であれば嬉々として戦闘狂を発揮したことだろう。

「お見通しか」
「というか人族全部殺したい、みたいな印象を受けたけど」
「まぁだが、会話くらいは出来る。ところであそこの銀髪は一体何なんだ」
「え、執事だけど」
「嘘だろ」

 サネシスはどうしてもヒースリアが執事だとは思えなかった。身のこなしもそうだが、態度がサネシスの想像する執事とはかけ離れている。

「嘘ついたって意味ないだろう」
「……何であんなのが執事やっているんだよ」

 アークは果たして今までにその言葉を何度聞いたのかもはや覚えてもいない。
 ヒースリアは心外ですと言わんばかりの表情をしているが、そこに説得力の欠片もない。

「いや、まぁ色々あって」
「サネシス。このおにーさんに聞くだけ無駄だからやめといたほうがいいよ。こっちが疲れる」

 実際聞いてツッコミをいれまくったラディカルの言葉には説得力があった。

「だな。……そうだ、アンタ」
「アーク・レインドフ。あっちはヒースリア・ルミナス」
「アークはホクシアを知っているか?」

 サネシスは、アークならば魔族や何かしらについて深く知っている可能性があると判断した。ならば情報を得られる可能性もある。その思惑はアークまで届いたようで、アークは情報を提供することにした。魔法が使えない異常事態に対して、何が起きているのか、何をすればその元凶を掴めるのか見当がついていない。ならば――魔族と協力を結ぶのもまた理にかなっている。

「あぁ。あの金髪少女だろ?」
「そうだ。それでアンタはラディカルと知り合いなんだよな?」
「まぁともに牢屋に入っていた仲だな」
「は? 牢屋?」
「お兄さん、それを今蒸し返さなくてもよくね!?」

 ラディカルの言葉にそれもそうだなとアークは話を流したがサネシスとしては詳細が知りたい所であった。
 最も目的は魔法が使えない原因解明であるがゆえに、余談の詳細を求めても、原因解明の回答が見つかるとは思えないため追及はしなかった。

「で、アンタは魔族をどうでもいいと思っているんだよな?」
「さっきも言ったけどな。後、魔族ってか人族もだけど」

 依頼があれば殺すし、依頼がなければ殺さない。

「よし……ならアンタは『魔術師』の単語を知っているか?」

 サネシスにとってそれは賭けだ。
 何故人族の青年にそんなことを口走ってしまったのかわからないが、後悔はないしそうすることが目的に近づける最善の道だと、恐らくは直感していたのだ。
 ラディカルは『魔術師』を知らないようで首を傾げている。ヒースリアの表情は見たくもないので飛ばした。
 アークの表情に変化はなかったが、だがそれを質問したのは正解だったことを知る。


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