零の旋律 | ナノ

双子贈物


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 カトレアが此処最近、花壇と自室を行ったり来たりしているのにリアトリスは気がついていたが、何をしているのか聞いても内緒と言われたので追及はしなかった。
 カトレアが何か楽しいこと、興味が持てることがあるのならば、リアトリスにとってはそれで構わないからだ。
 主人であるアークに紅茶を入れさせてティータイムを取っていた時だ、カトレアがおずおずとテーブルの上にブリザーブドフラワーが置いた。

「これ……初めてつくって見たんだけど、お姉ちゃんに……」

 恥ずかしそうにやや顔を伏してカトレアが告げると、リアトリスの顔が感極まる。

「ほんとですか!? これ貰っていいんですか!? 有難うですー!」

 リアトリスがカトレアに抱きついた。カトレアが手作りのピンクグルーテンドルストをメインとし、彩ってあるブリザーブドフラワーはどの角度から見ても綺麗だった。

「わーどうしましょう、嬉しくて嬉しくてどうすればいいですか!?」

 嬉しすぎて、リアトリスはわたわたとした動作で手を上下に振っていた。今のリアトリスなら空も飛べそうだなぁと紅茶を飲んでいたアークは思う。

「あと、ヒースとアークにも……いらなかったら、捨てて」

 そういって、薔薇をメインにしているのには変わりないが、薔薇の種類が違うブリザーブドフラワーを袋から取り出して置く。アークはアンバークイーンで、ヒースリアはイングリッシュガーデンだ。

「いらないわけないじゃないですか、部屋に飾りますよ。有難うございます、カトレア」

 アークに見せる笑みとは百八十度違う優しさに満ち溢れた笑顔でヒースリアは受け取る。

「ヒースに同意。部屋に飾るよ、有難う」

 アークも戦闘狂や仕事中毒だとは思えないほど、柔らかい笑顔で受け取った。

「アークやヒースにもあるなんてずるいです―。私だけにくれればいいんですー」

 リアトリスがカトレアを抱きしめながら頬を膨らませた。その様子が伝わったのだろうカトレアは微笑した。カトレアがいるだけで普段とは違った和やかな雰囲気を見せるレインドフ家だった。

「そうだ、カトレア。もしよかったら好きな物言ってくれれば用意するから、ブリザーブドフラワーで何か作ってくれないか? エントランスとか、ダイニングに飾ろうと思うんだけど?」
「主にしては珍しく名案ですね! そうしましょうよー」
「それがあれば、少しはレインドフ邸も華やかになりそうですね」

 アークの提案、リアトリスとヒースリアの同意にカトレアは恥ずかしそうに頬を染めながら

「いいの……?」

 遠慮がちに尋ねる。

「勿論。むしろお願いしたいくらいだ」
「うん、作る。でも材料は自分で用意するから大丈夫だよ」
「じゃあ、頼んだ」

 そうして後日、カトレアの作ったブリザーブドフラワーがレインドフ邸に飾られた。
 勿論個別にプレゼントしてくれたのは、自室に飾られてある。


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