零の旋律 | ナノ

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 レインドフ家に帰宅してアークを待っていたのは、何故かパーティーの準備をしている最中のリアトリスとヒースリア、それにカトレアだった。

「は? 何してんだ?」
「お帰りなさい」

 口調だけ丁寧な執事が迎える。

「ただいま。だから何をしているんだ?」
「見てわかりませんか?」
「わからないから聞いているんだ」
「洞察力に欠如している哀れな主に説明して差し上げましょう。私に跪いて感謝して下さい。あぁ靴はなめないで下さいね、この靴お気に入りなのです。是はお見合いが成功しない主への祝いです」
「待て! 成功する確率も考えろよ!」
「え、その確率なんて、隕石がレインドフ家に衝突するくらいの確率でないでしょう?」

 真顔でヒースリアは答える。優美な動作でテーブルクロスを広げる姿はやけに様になっていた。

「……」
「まぁ仕方ありません。お見合いはうまく行きましたか?」
「相手にフォーク投げてきた」
「主、結婚するつもりないでしょう」
「……俺のどこが気になったのですかって聞いて、人柄に惚れましたって答える女性と結婚しろと?」

 その瞬間、何かに躓いてリアトリスがバランスを崩してグラスが手から離れるが、絶妙のタイミングでグラスを掴みなおしたお蔭で割れることはなかった。ヒースリアが綺麗に敷いていたテーブルクロスはヒースリアの手によって一気にしわくちゃになった。カトレアだけが料理の準備を淡々としているが、はにかんでいたいた。

「あはははははっ! そ、そんな女性がいたとか、あはは馬鹿ですね! その女性はもう駄目です、是非一度会ってみたいものです」

 爆笑するヒースリアと

「その女性は私たちを笑い死にさせたいのですか? もうおかしくておかしくてあー、笑いすぎました」

 腹を抱えて笑うリアトリスだった。

「あーもう今日は主の見合い話をつまみに飲み明かすしかないですね」

 そういってリアトリスは準備中だったボトルを手に取る。

「つまみにってお前未成年だろ」
「大丈夫です、シャンメリーですから」
「ならいいか」
「主って変な所厳しいですよねー。安心して下さい、私とヒースとカトレアは冷やしたシャンメリーを飲みますから」

 そう言ってリアトリスは三人分グラスに注ぐ。

「え? 私にはお酒を飲ませてくれないのですか?」

 ヒースリアの抗議に

「だってヒースすぐに酔っぱらうじゃないですか」

 リアトリスは聞く耳を持たず、アークのグラスだけにワインを注いだ。
 そうして、レインドフ家はアークのお見合い失敗パーティーもとい宴会が開かれた。


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