Z 「お前は魔導を一切扱わないだろ? それは扱わないのではなくて扱えないんじゃないのか!? お前が魔族じゃないかと疑問を抱いた時に浮かび上がってきた。何故ならば魔族は魔石を扱えない」 「……魔族が魔石を扱える条件もあるけどな」 「あぁ、そうさ。魔族は自分自身の魔石であれば扱うことが出来る、けれど他人の魔石は扱えない、それは他人の魔力だからだ。だからこそ――お前に魔石を使って魔導が扱えるか試せばいい、そうすればお前が魔族かを大衆の前で照明出来るぞ」 カサネはナイフを半回転させて、刃を首謀者へ向ける。 「冥土の土産くらいはやるよ」 カサネは神経を集中させ、閉じた回廊を開く。 「お前らが俺の命を狙っていることに興味を持たず関心を抱かず放置していたから、とはいえそこまでの可能性を抱いて――かつ証明する方法を用意していたことに対する土産だ」 闇夜の月より明るく、全ての光を集中してもまだ足りないほどに黄金の輝きを放つ瞳。全てを飲み込んでも一変の闇に染まることを許されないような眩さだった。 「だが、それをお前が誰かに伝聞することは叶わない」 カサネが断言すると同時に、首謀者の前に黄金の魔法陣が具現し、光の糸が首謀者を拘束すると同時に、身体が崩れ落ちて行った。後には何も残らない、最初からその場には何もいなかったように跡形もなく消えた。 「……シオル、シオルだけ部屋に入れ」 カサネは扉の前に来て、告げる。シェーリオルが扉の中に入ると、背を向けたカサネだけがいた。首謀者は何処にも存在していなかった。 「カサネ……?」 「シオル。エレテリカのことを頼んだ」 扉が閉まり、外と中の空間が遮断された時、カサネは共犯者の方を振り向く。悲しみに満ち、今にも大粒の涙を流しそうな金色の瞳。 「カサネっお前まさか!」 「俺はもう王宮にはいられない」 「何故だっ!」 「わかっているんだろ? シオル……わかっているのに往生際が悪いことは言わないでくれ。もう少し一緒にいたいと俺が思ってしまう」 シェーリオルはカサネの肩に手を置く。きてほしくない時が訪れようとしていた。 「エレが悲しむぞ、それでもか?」 「わかっている。けれど、あの男が俺の正体に気がついた以上、遅かれ早かれ他の奴らも気がつき始める。俺が殆ど成長していない事実に。だったら気がつかれる前に俺は此処を後にする。じゃないと――エレテリカに迷惑がかかる」 「エレがそれを迷惑だと思うと、本当に思っているのか?」 らしくもなく怒気が籠っている。 [*前] | [次#] TOP |