零の旋律 | ナノ

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 カルミアが夜食を作って階段を上がってきたのと程同時に――タイミングを見計らったのではと疑わしくなるくらいタイミングよくリアトリスも戻ってきた。両手には沢山の買い物をした形跡が見られる。

「きいて下さい! 私ったら偉いですから今回は主のお土産も買ってきて差し上げたのですよ!」
「ヒースへのお土産の代わりか」
「勿論です。ヒースなんて泥でも食べればいいんです」

 そう言ってアークへのお土産をリアトリスは手渡す。全体の十分の一にも満たない大きさだ。残りの八割はカルミアへのお土産で二割が自分へのお土産だろうとアークは推測する。

「ははは」

 アークは乾いた笑いをする。リアトリスのことだ有言実行だとは思っていが、それでも一割くらいの確立で嫌がらせ目的のお土産を買うだろうと思っていた。

「それにしてもいい匂いです―。カルミアって料理上手ですよねー。どうですか? レインドフ家現在料理人募集中ですよ。今度の新聞に載ります」
「え……」

 疑惑の眼差しがアークへ向けられる。

「載せてねぇ! 募集中なのは事実だが、新聞掲載まではしてねぇ!」
「嘘はいけませんですよ。金に物を言わして新聞会社を買収したではありませんですか」
「なんで話が膨大になっていくんだよ!」
「つまり、それが出来るくらいレインドフにはお宝が眠っているっていうことです」
「んな纏めはいらねぇ!」
「あ、そうでしたカルミア。カルミアにはものすごーく聞きたいことがあるんでした」

 会話を無理矢理途中で切って――むしろ最初からアークとのやりとりはなかったかのようにカルミアの方へ振り向く。テーブルの上で盛り付けをカルミアはしていた。

「何?」
「戦闘狂の主が、何故カルミアには『戦おう』って言わないんですか?」
「リアっ!」
「それは確かに不思議ね、なんでかしら?」

アークが制止しようと叫んだが、それよりも先にカルミアもリアトリス同様に『戦おう』と言われないことに疑問を抱く。
強い相手であれば誰だって戦いを挑みたくなるほどの戦闘狂なのがアーク・レインドフだ。

「……あーそれは秘密」

アークにしては珍しく言葉を濁したのに、リアトリスは驚く。

「秘密ですと!? 主に秘密ごとなんて似合いません暴いてやるです」
「いや、暴かなくていいよ。まぁ――どちらにしても何れ戦いたいのは変わりないけどな」

好戦的な瞳をカルミアへ向ける。

「戦わなくていいわよ。私に戦闘狂と戦う趣味はないから」
「最近さーなんで誰も俺と戦おうって言ってくれないんだろうな」

カルミアが断ったから、というわけでもないがアークとしては戦いたい相手がいるのに断られるのに納得がいかなかった。

「そりゃ、戦闘狂と好き好んで戦いたいというのは戦闘狂だけに決まっているでしょ」
「ですよー」

カルミアとリアトリスの言葉に、アークは納得しなかった。


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