零の旋律 | ナノ

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「さて、後は研究所を壊せばいいのか」
「どうやってだ?」
「机投げて壊すのは面倒だし、カルミアなんか大技でも使って研究所壊して」
「それこそ御免だ。どんだけ体力使うんだよ。お前が魔導でも使えばいい話だろ」
「え、アークって魔導使えるのか?」

 何気なく言ったカルミアの言葉にヴィオラは痛みも忘れて驚く。始末屋アーク・レインドフ、その戦いぶりを数度しか見たことがないが、それでもアークが魔導を使って何時所を目撃したことがない。何時も変な物を武器にして戦っていることがアークは多い。

「……一応」

 ポケットから取り出したのはアクセサリー状に加工をしていない魔石だ。

「ってか、カルミアこそ火属性の魔導とか使えないのか? ババーンと」
「火とかは苦手なもんで、煙草に火をつけるくらいしか使えないな」
「ちっ……」

 使いたくない雰囲気を全身から醸し出すアークに、何か魔導を使いたくない理由があるのだろうかとヴィオラは疑問に思い問うと

「魔導だと戦っているって感じしなくて詰まらないから好きじゃないんだよ」

 という返答が返ってきた。戦闘狂なアーク・レインドフらしい返答と言えば、返答なのだろうかとヴィオラは悩むところだった。

「だけど、まぁ仕方ないか。ならリアとヴィオラとカルミアは先に研究所後にしていろ、終わったらカルミアの部屋に行くから」
「了解です―。そのまま崩落に巻き込まれるなんて無様な真似をさらしたら日干しにして差し上げますから」
「最初の言葉以外余計だろ」
「仕方ありませんよー。それが私なのですから、ではでは」

 リアトリスはヴィオラに肩を貸したまま、背を向けて歩き出す。カルミアもそれに続く。研究施設から外に出た所でカルミアはリアトリスに声をかける。

「ヴィオラは俺が背負うから」
「では遠慮なくお願いしまーす」

 ヴィオラはリアトリスの手を借りて、カルミアにおぶさることになった。

「人目につかないように俺は帰るつもりだけど、リアトリスはどうする?」
「そうですねぇ、カトレアへのお土産を探しながら帰りますです」
「わかった、後でな」
「ですね」

 リアトリスは一人繁華街へ向けて歩き出す。アーク・レインドフやカルミアが相手を昏倒させたお蔭で、起き上がっているものは誰一人としていなかった。人が倒れている間をバランスよく飛び跳ねながらリアトリスは進んでいった。

「なぁ、アークやリアトリスはあんな性格だから多分問わないとは思うけど、俺としては気になるところだからきく。魔術師って何だ?」
「……いつか、答えるべき日が来たら答えてもいい。けど――まだ答えたくない」
「そうか、そう言われると追及してもな。吐かせる手段はいくらでも心得ているつもりだけど、強引なことはしたくないし」
「そりゃ有難いね」
「けど、一つ覚えておけよ。喋るのを渋っていたが故に事態が悪化するってことも大いにあり得るんだ」
「……すでに手遅れなんだけどな」

 それはヴィオラの独り言。カルミアの耳には届いたが、カルミアは何も追及しなかった。
 本人が答える日を決めているのならば、それを尊重してのことだった。


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