零の旋律 | ナノ

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「ってかさぁ、俺が戦いたいのに先制攻撃かまさないでよ」

 アークがカルミアに対して軽く抗議する、先制攻撃をしたのは俺だ、とヴァイオレットは内心で叫ぶ。内心で叫んだのは、実際言葉にした所でそうだっけ? と首を傾げられる可能性が高いと判断したからだ。

「俺に攻撃してきたんだから反撃に出るのは普通だろう」

 ヴァイオレットは会話から如実に伝わってきたが、戦闘面に関してもこいつらは危険だと直感が告げてくる。そもそも一対一ならまだしも二体一で相手どっちいい相手ではない。

「それもそうなんだけど……まぁいいや」

 アークは手短にあった机を再び手に取る。何故机を武器にすると叫びだしそうなのを寸前で押さえる。机が再び宙を舞う。ヴァイオレットが回避動作を取る瞬間を見計らないカルミアが蹴りを繰り出してくる。コンクリートさえ粉々に砕きそうな勢いの蹴りに、直感でヴァイオレットは屈む。そのまま攻撃に出ようとしたが、銃を構えた先にカルミアはいなかった。何処だと思う前に嫌な汗が全身を伝う。ヴァイオレットは地面にへばりつくような体制を取ると、背中を机が掠める。気がつくと机三つが器用に並んでいた。冷や汗が止まらない。退却するのが一番だと思いつつも、まだ足止めをしなければいけなかった。
 ――早く来いよ……!
 ヴァイオレットは魔石を宙へ投げ、それを拳銃で撃ちぬくと同時に魔石は光を伴い、球体の光を生み出し、そこから百八十度光線が無数に炸裂する。カルミアの姿は以前ない。アークは舞を舞うような軽やかさで悉く交わす。カルミアが姿を現したのは球体の前だ、いつの間にか片手に――本来なら両手で持つ斧を握り、球体に斧を振りかざす。 硝子のようにひびがはいり、やがて砕け散る。雨のように欠片は振り、途中で透明になり消えていく。

「はぁ!? なんで無傷なんだよ……」

 この二人とこれ以上対戦しては命が持たないとヴァイオレットが焦りを覚えた時、ヴァイオレットに救いの声が響く。

「ヴァイオレット、終わりましたよ」

 ヴァイオレットが背にしていると扉が開き、そこからローブでほぼ全身をおお隠した人物が姿を現す。僅かに見える容貌は、少年にも、少女にも、青年にも女性にも見える。声色も中性的で性別がどちらかは判然としない。


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