零の旋律 | ナノ

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「じゃあ、是から人族が新たなる魔物を作り出したとしたら、どんな心境になる?」
「へー、新たに魔物って作れるんだ、っては思うんじゃないの?」
「感想しょぼっ」
「だってなぁ感想って言われても困るだろ。俺としては、その魔物を始末しろって言われたら始末するし、邪魔をすれば殺す。けれど――何もしないのなら何をするつもりもない」

 アーク・レインドフの答え。大多数の人とは根本的な考え方が恐らくは違う。

「……なんか、なぁ」

 ヴァイオレットとして反応に困る。けれど、だからこそ質問を続けたかった。大衆とは違う答えを持つ彼らの答えを知りたいから。

「例えば、だけど。本来人は魔石を使用せずに魔法を扱えていた。けれど、現在の人は魔法を封じられ、魔法を使用出来なくなかった。だとしたら、そうした元凶を恨むか?」
「別に恨みもしないだろうし、第一何も変わらないだろ」
「変わらない?」
「現状の話をするなら、魔石を使えば人族は魔導を扱える。仮に魔石を必要とせず魔導が扱えたところで、別段差はないだろって俺は思うが」

 アークはそう言って普段から所持しているルビーのような輝きを持つ魔石を取り出す。丸みを帯びたそれは、宝石のようで、アクセサリー状に加工をしておらず、魔石単品だ。

「いや、それはそうだけど……普通そんな風に割り切れるのか? 魔導は魔石なくては扱えない。けれど魔法は魔石なくて扱えるんだぞ? 魅力的だとか思わないのか」
「やめとけよ」

 ヴァイオレットの問いに、飽きたといった表情でカルミアは制止する。

「何故だ?」
「問いかける相手が間違えている。こいつにそんな話をした所で興味がないだけだ」
「……まぁそれはそうか。ならあんたはどうなんだ?」
「悪いけど、俺もこいつと殆ど同じだ。最も――大多数の一般人として意見をいうのならばやはり代用できるものがあるとしても――それは所詮偽りの力であって自分たち本来の力ではないと思い、恨みはするだろうな。俺たちみたいな思考回路の持ち主の方が少数派であり且つ異常なんだよ」
「そりゃ、そうだ。俺だってそんな返答をされるとは思わなかったよ」

 ヴァイオレットは銃口をカルミアへ向ける。そして引き金を引く――しかしすでにその場にカルミアはいなかった。
 ――背後か!
 突然、何かが現れる不気味な気配を感じて振り向く。すぐそばにはカルミアが悠然と立っていた。そしてカルミアが回し蹴りをかましてくる。慌てて腕でガードするが、重たい攻撃に腕が痺れる。
 二撃目を食らってはたまらないとヴァイオレットは慌てて回避行動をとる。
 回付行動を取った瞬間机が宙を舞ってきた。ヴァイオレットは仕方なしに結界術を唱え、机から身を守る。

「なんで机が降ってくるんだよ!」

 気だるげな表情のまま叫んでいた。

「え、手短になったから」

 素直にアークが答える。手短にあったからといって――机に右手が触れていたからと言って武器としての威力は高くなさそうな机を遠慮なく投げるとは思ってもみなかった。ヴァイオレットのイメージとしては、攻撃というより防御の役割を机は果たすものだと思っている。どちらにしろ武器防具を目的に作られたものではないのだが。


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