零の旋律 | ナノ

軍師研究



 雪が舞い、建物も道も白い。幻想的な雰囲気だなとアークは雪景色を眺める。
 息を吐けば白く、気温が低いことを物語っている。普段よりコートを一枚多く羽織っているから寒くはないが、道行く人の恰好より薄着だなと今さらながら実感する。

「行く前に片付けておきたいことがある。こっちだ」

 素の口調で喋るカルミアに聊か違和感を覚えながら、アークはカルミアが示した方向についていく。その方向は研究所から少し離れている。
 カルミアが先導する先には、警備員らしき二人組が歩いていた。道中何もないと油断しきっていて、談笑をしている。それを発見した瞬間カルミアはアークの隣から、消え、警備員の背後に現れそのまま昏倒させた。手際がいい動きに最初からそれが目的だったとアークは判断する。警備員として簡単に昏倒させられいいのだろうかとアークは一瞬だけ疑問が浮かぶが相手がカルミアならば仕方ないとした。

「こいつらは?」
「こっちの方向にはジギタリスとカイラの二人が住居を構えている。あの二人は護衛とか警護とかを今生業にしているから、もしかしてと思ってな」
「成程。ジギタリスがやっているなら信頼度抜群だろうし、確かにジギタリスが研究室の警備依頼をされたら面倒だ」
「だったら可能性は先に潰しておく」

 カルミアはジギタリスとカイラの住居を訪れる。雪かきがしっかりしているのか、屋根には先刻積もったばかりの雪しかない。玄関の入り口には紐があり、紐の上には鈴が付けられている。呼び鈴をカルミアが数回鳴らすと、扉から銀髪の青年が姿を現す。

「……」

 サングラスをしているせいで表情は伺えないが、それでもカルミアとアークの登場に眉を顰めているだろうことは判断が出来た。

「ジギタリスは?」

 最も普段とは雰囲気も印象も違いすぎるカルミアのことをカルミアだと判断出来たかは怪しい所だ。

「……」

 顔を部屋の奥に移し、そのまま扉を開けた状態にして進む。無言だったが、ついてこいと言っていた。アークが先に入り、続いてカルミアが入る。最後に入ったカルミアは冷気が侵入してこないように扉を閉める。ついでに居留守を使えるように鍵も勝手に掛けた。警備員二人は昏倒させたが、他の警備員がジギタリスを訪ねないとも限らない。
 部屋に通されると、そこには銀髪の――カイラと同じ銀髪だが、しかし髪質や光加減で輝く色合いは違った。足元まである長い髪にアークは邪魔にならないのだろうかと密かに思う。

「レインドフとカルミア、何用だ?」

 淡々とし、突然の来訪にも驚いていないようだった。

「それにしてもカルミアはそうしていると――何というか、違和感があるな」

 そしてジギタリスの正直な感想。来訪よりカルミアの姿に驚いたといったところだろう。


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