零の旋律 | ナノ

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「宜しく」
「えぇ、宜しく、でアーク偶々酒場にやってきたわけではないのでしょう?」
「カルミア、この城下町にある研究施設に関する話しは何か知らないのか?」

 アークは単刀直入に聞く。単刀直入過ぎてヴィオラはいいのだろうかと疑問に感じたが、しかしアークが直接聞くくらいだ、信頼するに値する人物なのだろうと判断し余計な口は挟まない。

「……そりゃあ、酒場だから多少話しは色々出てくるけど、そうね、昔――大体十二年前? くらいから一大プロジェクトが立ち上がってそれがもうすぐ完成しそうって話は耳にしたわ」

 重要な情報を漏らす馬鹿は何処のどいつだとヴィオラは冷笑する。酔っ払って酒の摘まみに話したのかもしれないが、不用心過ぎる。最も、そのお蔭で情報を入手できるのだ、ヴィオラにとっては願ってもないことである。

「そのプロジェクトが何なのかまでは知らないけれど。でも帝国が機密保持をしている研究機関、警備とか生半可じゃないとは思うけれど。三人で侵入するには聊か厳しいんじゃないのかしら」
「何いっているんですか! 私はそんな危険な所に足は運びませんよ。観光に徹底しますですよ」
「……二人で侵入するには人数が少ないのでは?」
「なら、雇ってやるからカルミアくるか?」
「冗談もほどほどにして、帝国、アルベルズっていくところがなくなったら私、リヴェルアへ戻るしか選択肢なくなるじゃないの」

 何時までもアークとヴィオラが注文をしないので、アークには赤ワインを、ヴィオラにはブドウジュースを出した。ヴィオラはどうやら未成年に見られたらしい。

「そうか、別に大人数いなくても問題ないだろう、邪魔するなら――殺すだけだし」
「全く、レインドフって本当に物騒よねぇ……。まぁ人手を万が一募集するのだったら、ジギタリスにでも声かけてみれば?」
「ジギタリス? あいつも帝国にいるのか」
「えぇ、城下町でカイラとともに要人警護だかなんかをしているはずよ、あの実力だから依頼がひっきりなし見たいだけど」
「ふーん、でもジギタリスとだったら戦いたい」

 戦闘狂故に。ヴィオラは会話についていけず、成り行きを聞いているだけだ。リアトリスに至っては聞いているからすら怪しい。追加注文した鶏肉のソテーを頬張っているのだから。

「ハイハイ、まぁそんなところよ」
「まぁ、大体充分だ」
「お役に立つかは知らないけれど、でも始末屋らしくない依頼ね」
「そうか? 花屋の代わりをよりは始末屋らしいと思うが」
「……悪名高きレインドフ家を花屋として扱うだなんて何処の命知らずよ」

 リヴェルア王国の策士様だ、とは言わなかった。

「じゃあ、ヴィオラ行くか、リアトリス代金は置いていくから勝手に食べてろ」
「ほいほーい」

 昼間より夜に責めるのが定石だと、アークとヴィオラは酒場を後にする。
 二人がいなくなったところでカルミアはリアトリスに声をかけた。

「なんで、貴方はアークのとこでメイドを?」
「カトレアの為ですよ」

 淀みなくリアトリスは答えた。


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