零の旋律 | ナノ

V


 ヴィオラはアークの言う“眼帯君”が誰だか知らないが、魔物の正体を知っているのなら魔族と関係があるわけだろうし――眼帯をしているのならもしかしたら、眼帯をしている方の瞳が金なのではないかと推測がついた。魔族と人族の混血、それは魔族以上に珍しい存在だが決していないわけではない。

「で、話を戻す。だからこそ、魔力を狙う魔物が現れるのはおかしい、なら人工的な何かを考えるべきだ。色々調べていたら帝国直下の研究施設が怪しいと判断したのさ、一旦近づいたが一人じゃない方がいいと思ってレインドフに依頼をしようと思ったわけだ。ホクシアたちは巻き込みたくないしな」
「魔力を狙う以上、どんな魔石よりも魔石の原型である魔力を狙う、それはすなわち魔族を狙うってわけか」
「そういうことだ、依頼引き受けるよな?」
「勿論。リアトリス行くぞ」
「は?」
「へ?」

 リアトリスとヴィオラが同時に呆ける。

「ちょっと待ってください! 帝国なんて長旅したくありませんよ! 私はカトレアとのんびりするのです! 第一アルベルズ王国の時も私はヒースの代わりに言って差し上げたのですから、今度はヒースが長旅をするべきです!」

 カトレアと一緒に帝国へ行く選択肢は最初から存在しなかった。何が起きるかわからない帝国にカトレアを連れていくなど姉として言語道断だ。

「いや、ヒースが今度はリアトリスを連れて行って下さいねっていっていたから」
「……ちょっと今からヒースの首を絞めてきますです! 私からカトレアと一緒にいる時間を奪うなんて非道! 悪魔! 人の皮を被った鬼畜!」
「ん? 最後順番おかしいだろう。わかった、わかった。じゃあヒースとじゃんけんして負けた方が一緒にこい」
「わかりましたよーもー。主の横暴―出張手当出さないと許しませんよ」
「帝国の観光でもすりゃいいだろう」
「あ! そうですね。まぁ私はじゃんけんに負けるつもりは毛頭ありませんが」

 そういってリアトリスは此処でようやくヴィオラの髪から手を離して、ヒースにじゃんけんを挑みにいった。

「っておいアーク、なんで使用人を? それもヒースリアの方ならまだしも」
「観光でもすりゃいいじゃん。いやヴィオラが俺を運んでくれるなら別だけど」
「は?」

 意味不明の言葉に首をかしげかけた時、扉が乱暴に開き、ご立腹のリアトリスが姿を現した。

「負けたか」
「ヒースのばかぁー! なんであそこでチョキを出すんですか!? 意味不明です、滅べばいんですよー。主、私は帝国でお土産をたくさん買い込んでヒースには一切買わない予定ですので、沢山お金下さいね!」
「はいはい」
「全くもー主が仕事中毒なのがいけないんですよー。まぁアルベルズの時見たく後から探すのよりは楽ですけどもー」

 アルベルズ王国へ依頼を遂行しに行った時、アークは単独で行った。その為、後々仕事中毒なアークが三日三晩働いた後、倒れることを危惧してヒースリアの頼みでリアトリスはアルベルズへやってきた。
 仕事中毒なアークを探すため、あちらこちらを回る羽目になった。具体的には裏路地を回ったり、ゴミ箱の中を覗いたりである。その作業はリアトリスにとって面倒であった。それならば、後々探す羽目になるよりは最初から同行していた方がまだましである。

「……まぁ、別にいいんだけど」

 ヴィオラは結局仕事中毒の何が問題でメイドが同伴するのかわからないままだった。
 ヴィオラはアークが三日三晩働いた後倒れることを知らない。他国で倒れられると移動時間が自国よりも遥かに取られる。その間に何も起きらないとは限らない。だからこそ、リアトリスが同伴することとなった――じゃんけんで負けたから。

「所でヴィオラ、お前なんで髪の色黒じゃないんだ?」
「黒髪で詐欺を行ったから万が一のことも考えて。第一お前にはバレたんだから意味ないだろう」
「それもそうか」


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