零の旋律 | ナノ

詐欺師依頼


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 人語を話す魔物に出会い、ラディカルやシェーリオルと再会した後は、特に何事もなくアークとヒースリアはレインドフ邸に帰宅した。庭ではカトレアが花壇の世話をしていた。カトレアが毎日のように手入れをしているだけあって、花は見る人の心を癒すかのように咲き誇っている。

「あ、お帰り」

 花壇の手入れをしていたカトレアだが、足音が聞こえて振り返る。

「ただいま」
「お客さんが来ているよ」
「依頼人か?」
「うん。お姉ちゃんと盛り上がっていたよ」

 リアトリスと盛り上がっている? アークはリアトリスの知り合いだろうかと考えるが、心当たりはなかった。依頼人を待たせては悪いとアークは屋敷の中へ入っていく。
 その様子をヒースリアは相変わらずの仕事中毒だと冷笑した後、カトレアの方を向く。

「カトレア、少し休憩でもして紅茶でも飲みませんか?」
「うん、そうする」
「じゃあ紅茶を入れていきますからキリがいい所できてください」

 是がアークならアークに紅茶を入れさせるヒースリアである。

 客間の前で扉を開けようとした足が止まる。怒鳴り声が聞こえてきたからだ。何が起きているのだとアークが扉を開けると、依頼主の髪の毛をリアトリスが引っ張っている場面だった。

「オイ! 引っ張るな! 痛いだろ」
「折角ですから記念に貰っておきましょうかと思って」
「前だけ禿げさせるつもりか!?」
「新たなニュースタイルが誕生しますね! まぁ、全く流行しないでしょうが、でも周囲の注目度は抜群ですよ」
「そんな注目はいらねぇよ!」
「酷いですー私の案を無視するなんて、貴方一体何様なんですか?」

 そうリアトリスが言った時、依頼主とリアトリスはアークの存在に気がつく。

「いい所を邪魔してくれる空気の読めない主、何用ですか?」
「空気が読めないのはお前だろ」
「私は違いますよー! 読めないのではなく、空気を読まないんですから」
「……はいはい。で、詐欺師何の用?」
「ヴィオラだ」

 依頼主――ヴィオラは椅子に座って、リアトリスは机に座り未だヴィオラの前だけ長い髪の毛を引っ張って遊んでいた。
 内心、是は盛り上がっているのではなく、リアトリスが一方的に遊んでいるだけだぞカトレアと言ってから、アークも椅子に座る。

「始末屋に来るんだから依頼に決まっているだろ?」
「始末屋、としての依頼か?」
「何だそれ」
「いや、最近どうにも知り会いからの依頼は始末屋としての仕事じゃないのばかりを頼まれるもので」

 主にカサネとシェーリオルの二人組に。主にというか彼らだけだが。

「帝国まで来てほしい」
「は?」

 予想外の言葉に思わず驚愕を言葉に表してしまう。

「帝国のある研究施設の、その設備と人族を始末するのを手伝ってほしいんだよ」
「で、その研究施設ってのは」

 何処か嫌な予感がしながら、アークは続きを促す。アークの勘は大抵外れない。


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