零の旋律 | ナノ

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「で、眼帯君は人語を話す魔物を探していたのか? 相変わらず海賊からははなれた事ばかりしているなぁ」
「海賊の船長になるのは今でも諦めていないんで、ちまちまやっているって。人語を話す、なんて普通じゃありえないからな、そちらを優先しただけだ」
「ふーん」

 人語を話す魔物と出会った以上、アークとしては魔物が攻撃を仕掛けてくるのなら武力を行使するだけである。しかし、何もしてこないのなら人語を話す魔物が何なのか興味はあった。今の機会を逃せば今後出会えるとも限らない。

「オマエ……ラ……オ……レを」
「うおっ、本当に喋った。どういうことだ」

 ラディカルの瞳は真剣そのものだ。魔物を見据えている、まるでその原因を探し出そうとしているようだった。

「さぁ、わからねぇけど、何か魔物が進化したとか?」
「……なぁ、アンタ。答えろ、何の“異変”があったんだ」

 アークの言葉をラディカルは無視する――むしろ聞こえているかすら怪しかった。ラディカルは魔物に問う。“異変”を。

「なぁヒース、眼帯君は何かを知っているのか?」
「推察力もない哀れな主のために、私も同意して差し上げますよ。何も知らないければ、あんな言葉は出てこないでしょう」

 何かを確実に知っている節であるラディカルの様子をアークとヒースリアは暫く見ることにした。

「いへ……ンア、アレガ……イヘンなの、か?」
「それだと思うものを全てあげろ」
「マ……きが、おかし……ダカら、きょふで……ダ、そう、シタ」

 言葉が途切れ途切れでアークとヒースリアには何が言いたいのか、見当がつかなかったが、何かを知っているラディカルにとっては途切れ途切れでも一つの文章を繋いでいくことが出来た。魔物が喋った言葉の意味を理解すると同時に、驚愕で瞳が見開かれている。

「まさか、無理矢理体内から出そうとしたのか?」
「オレ、は……ウデにむり……た、だから、ナ……い、ふで、エグだ」
「……なぁ、はっきり言うけど、それが代償であり真実だ。もう魔物として生きていくか、それが嫌なら死ぬしかない。死にたいのなら俺が殺してやるけど、どうする?」

 全てを理解したラディカルはナイフに手をかける。

「コロ……し、て、ナニも、オキナイ……まえに」
「わかった」

 ナイフを振り上げようとした時

「おーい眼帯君、意味がわからないんだが」

 アークの声で、ナイフは魔物の頭上ですれすれで止まる。
 ラディカルは一瞬思案したが、相手が始末屋アーク・レインドフであり、彼と恐らくは同種であるヒースリアならばいいかと判断する。


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