零の旋律 | ナノ

始末屋再度


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 治癒術師ハイリの言いつけ通り、三日間療養したアークはすっかり元気溌剌としていた。ベッドの上でストレッチをして鈍った身体を解す。服を着替える時包帯も取る。傷が一つも残っていないのは流石の腕前だなとアークは感心する。
 そのまま、仕事へ向かう前に――カトレアとリアトリスがいるだろう部屋へ向かう。予想通りカトレアの部屋にはカトレアとリアトリスがいた。仲良く談笑している。

「なんですかー主。乙女の部屋に土足で踏み入れるなんてプライバシーの侵害です」
「はいはい。カトレア、それにリアトリスもさ交流都市ホクートまでいくか?」
「なんでホクートまで行かなきゃいけないんですかー。一人で行ってらっしゃいです。私はヒースと交換日記やっていますから」
「俺を虐める内容候補日記か!?」
「なんでわかったんですか!?」
「あれって交換日記なのかよ!」
「さ、さては乙女の引き出しを勝手に見たんですね!?」
「隠し場所バレバレじゃねぇかよ! 今自分で言っていたぞ!?」
「あの……」

 アークとリアトリスのやりとりを笑って聞いていたカトレアだったが、遠慮がちに声をかける。すると今までのやりとりが嘘のように二人して口を閉じた。沈黙が流れる。

「どうして、私をホクートに?」

 リアトリスがさりげなく流した話題だったが、カトレアをとしては態々自分を誘ってきたことが不思議だった。滅多にカトレアを仕事に同行させることがないからだ。

「ああ、交流都市ホクートにシャーロアっていう情報屋いるんだけど、年がカトレアより二個くらい下な少女で、仲良くなれるんじゃないかなと思って」
「それならそうと早く言って下さいよー」

 再びカトレアが返事する前にリアトリスが答える。

「反応本当早いよな、リアは。情報屋って名乗っているけど、なんかリィハより強い普通の少女って印象だったから、どうだろうと思って」
「ってことは情報屋だけど、裏っぽくないって感じですかー?」
「ああ。リィハいわく、情報屋ではないと疑っているほど情報屋らしくない。見た目も普通の少女だ」

 普段、レインドフ邸にいるカトレアとリアトリスには同年代の友達が殆どいない。交流があるのもせいぜいレインドフと関わり合いのある者たちだけだ。特に、滅多にレインドフ邸から出ないカトレアはリアトリス以上に交流が狭い。
 偶には同年代の友達を作ってみるのもいいんじゃないかとアークは思っていた。
 それに情報屋であるシャーロアなら、拒まないだろうと自然に思えていた。だからこそ、誘った。

「なら、私とカトレアも同行しますですー、カトレアに友達が出来るチャンスがあるなら私は応援しますですし、それに――裏っぽくないなら、なおさらです」
「よし、じゃあ準備出来次第出発するぞ」
「了解です、あ、でも主、朝食がまだです。作って下さい」

 復帰早々朝食を要求される主であった。


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