零の旋律 | ナノ

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「で、どうだ?」
「勿論、絶対嫌です。天変地異が起こっても嫌です。いーかげん諦めてお見合い結婚しちゃってください」
「じゃあリアトリスと見合いしよう」
「主の学習能力のなさは天下一品ですね。わかりました、私からも名案を授けますよ!」
「なんだ?」
「私じゃなくて、ヒースと結婚して下さい」

 アークが倒れた。瀕死だ。

「ぜってぇ御免だ! 世界が滅んだって嫌だ! 世界が滅ぶかヒースかの二択なら俺は迷わず世界が滅ぶ方を選ぶ! 第一そんなことをするくらいなら俺は自害するぞ!」
「私だって嫌ですよ! なんでそんな光景見たら、瞳に毒です。毒殺されます」
「ならそんな提案するな! 名案じゃねぇよ。愚案通り越しているだろ!」
「失敬。間違えましたーです」

 未だアークは瀕死だった。むしろ悪化した。

「因みにヒースにも、この間馬鹿げた愚案を出してくれたお礼を兼ねて言って差し上げたら、殺気立っていましたよー?」
「俺だって殺気立つっての」
「ヒースの場合は『そんなことをするくらいなら、俺は是から世界を救ってくる!』とか言い始めていましたよ」
「うわー。さりげなく口調素バージョンだし」
「仕方ないので、リィハを置いてきました」
「それでお前が紅茶持ってきてくれたのかよ!? 此処は避難所かよ! てかリィハご愁傷様」

 ハイリの現状が目に浮かぶようであった。

「今頃血まみれで倒れているかもしれませんねぇ」
「他人事だなあ」
「他人事ですし」
「九分九厘お前が原因だぞ」
「残りの一分一厘はヒースが元凶ですし。自業自得ですよ」
「加害者ヒースリア、被害者リィハか」
「ですね。新聞記事に載るでしょうか?」
「お前は何を期待しているんだ!?」

 アークはベッドから降り、リアトリスが入れてくれた紅茶を取りにいく。会話をしている間に程良く冷め、まだ熱いながらも飲めないことはなかった。ただ、並々にそそられた紅茶はそれなりに飲みにくい。
 ハイリの話題で一通り盛り上がった後、アークとリアトリスは揃って夕食を食べに下へ降り、部屋の扉を開けると、広々とした部屋の中にはカトレアとヒースリアしかいなかった。こころなしヒースリアの顔が普段より艶やかだった。

「……リィハは?」
「『もう二度とアークの治療なんかするか! つーか例え大怪我したって治療になんてこねぇ!』って捨て台詞を吐いて帰りましたよ」
「……お前は何をしたんだよ」
「少し運動しただけですよ。いやあ動く的に当てるのは中々難しいですね」

 満面の笑みを浮かべていた。その笑みは魔王すら裸足で逃げ出したところで何ら不思議はない威力を誇っている。

「リィハよご愁傷様」

 壁を見るのは何処か恐ろしくてアークはカトレアを凝視することにした。


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