零の旋律 | ナノ

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「(絶対物置じゃないよな)」

 そこは最初から物置言われるような場所ではない。普通の部屋だ、薄暗くない。照明もちゃんとしている。乱雑に物が置かれているわけでも一つにまとめてしまわれているわけでもない。ちゃんと入れ物があり、本棚やクローゼットやケースもある。壁には何かの名画が額縁に入れて飾られている。劣化しないように、光の向きも考慮されていた。
 レインドフの他の部屋の二、三倍はありそうな広さを誇っている。整理整頓がされているのは、アークの性格からか。
 数分後、カトレアの探し物は無事に見つかった。探し物は星をモチーフにしたペンダントだった。

「(これをレインドフが選んだのか、中々趣味いいよな)」
「有難う、アーク」
「どういたしまして。リアリアがティータイムするらしいから、カトレアも混じってきたらだろうだ。カトレアなら両手広げて歓迎されるだろ。お菓子が二倍貰えるぞ」
「私も魔石探し手伝った方がよくない?」
「いや、大丈夫だ」
「そう? じゃあいってくるね」

 カトレアが静かに扉を開けて、レインドフいわく物置から出ていく。

「……なあ、レインドフ。感想を一言いってもいいか?」
「予想はつくがどうぞ」
「本来はカトレアが普通なんだろうが、此処にいることに異常を覚えるぞ」
「ヒースやリアトリスは変すぎるからなぁ、それに慣れるともうカトレアが存在するだけで心が癒されるようになる」
「普段どんだけ心傷ついているんだよ……」
「気にしたら、負けだ」

 アークは魔石を仕舞っている宝箱の形状をした箱を取り出す。埃をかぶっていな所を見ると、最近掃除をしたばかりなのだろう。赤と金で彩られた箱は、誰が見ても宝箱だと思うだろう。
 実際中に入っているのも、人によってはお宝ともいえる。魔導を扱う魔導師とかには特に、だ。

「これと、これとあーとこれもか……好きなのを選んでくれ」

 次から次へと宝箱が出てくる。

「本当に宝探しだな」

 宝箱を開けると色とりどりの魔石が入っていた。輝きが失われない魔石は宝石のよう。

「ってか何でこんなに魔石を持っているんだ?」
「あー依頼とかで貰ったりしていたら。必要以上に魔石を持たないもので。眠っているよりリーシェ王子が使ってくれた方が有効活用だろ? まあ……リーシェ王子は壊すから有効活用かはわからないが」
「壊したくて壊しているわけじゃないんだけどな」

 幼少期からそうだった。最初は魔石には回数制限があって使ううちに壊れていくものだと思っていた。けれど、シェーリオルは聡い。すぐに他の人が扱った魔石は壊れないと気がついた。
 自分が魔石を扱えば壊してしまうことは周囲にばれないようにしてきた。王子である以上、ばれたからどうということはないだろうが、念には念を入れて。幼いうちはなおさらだ。十代後半になって、ようやく隠さなくてもいいと判断した。その頃には既に、魔導において右に出る者はいないと言われる程の魔導師になっていたからだ。最も十代後半の時はすでに赤い魔石を身に着けていたため、魔石を壊すことはなくなっていた。

「でも、本当に謎だよな」
「……そうだな」
「全く心当たりがないって顔じゃないな。まっ詮索するつもりは全くないけど」
「それはそれで有難い」

 シェーリオルは数個の魔石を選別して――ついでにアークが作った夕飯も頂いて帰宅した。

「(料理出来るとか、結構以外だよな……そういや、あの執事にお菓子要求されていたから、料理全般は得意なのか)」

 シェーリオルが予想していたのより、アークの料理は遥かに美味しかった。
 シェーリオルが帰宅し、夕食の後片付けが終わった段階でアークは再びレインドフいわく物置を訪れる。

「もっと持っていってもいいのに。まあ、必要になったらまたあげればいいか」

 残った魔石は丁寧に宝箱の中へ仕舞われた。


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