[ 「なんで終始俺はヴィオラに嫌われたままだったんだ?」 嫌われる心当たりがないシェーリオルは首を傾げる。しいて理由を探すのならば握手したことだけ。しかし握手はシェーリオルが求めたものではなく、ヴィオラが求めたものだ。 「謎だなぁ」 「そうだ、リーシェ。ヴィオラに何処かで俺は会ったもしくはヴィオラに似た何かを見た気がするんだが、なんか知らないか?」 「いいや、俺は全く心当たりがないな」 「そうか。ならいいや、でリーシェ王子は俺と戦ってくれるのか?」 「俺は何時、何処でそんな約束をした」 「今から約束しよう」 「断る」 アークはどうしてもシェーリオルと戦いたかった。いっそ攻撃を仕掛けても構わないかと武器を取り出そうとした時――シェーリオルは魔導を今まで通りに扱えない事実を思い出し止める。どうせ戦えるなら万全の状態で戦いたいと思うからだ。 「そうだ、リーシェ。暇ならレインドフまで来るか?」 「暇かと言われれば暇ではないが、何故?」 「レインドフにある魔石いるならやろうかと思って。発掘すればいいもの転がっていると思うぞ」 「宝探しかよ」 「一部はちゃんと展示してあるぞ」 「コレクションなのか……?」 「集めてはいないけどな」 「使わないなら有難く頂きたいな」 魔導を使う度に高確率で魔石が砕け散ってしまうリーシェとしては、複数回使えそうな魔石はあるだけで有難い。今までとは違い。魔導を連発しないように心が得てはいるが、そうはいかないときもある。 「そうですね、主が持っていても宝の持ち腐れですしね」 「魔石は必要最低限あれば問題ないし」 「主も一応は魔石を所持していますが、魔石より小枝を武器にする確率の方が高いですしね」 「それはそれでどうなんだよ」 シェーリオルは未だアークが小枝で戦っているところを見たことはないが――石で戦っているところは見たことがある。 「武器に出来れば何でも問題はない」 何でも武器にしてしまうアークは、勿論魔石を武器として扱うこともできる。普段はそれをしないだけ。 歩きながら会話をつづけているとあっという間に街まで帰還した。そのまま、船に乗り込む。 「そういや、結局行きの船が満席だったのはなんでだ?」 「本当に何故でしょうね、不快極まりなかったです」 さりげない疑問は解消されることなく、記憶の片隅へと消えていくだろう。 「(……『シオルはただでさえ目立つのですから、目立たないために周辺の切符を全部買い取っておきました』ってのが原因だって知ったら多分あの執事切れるよな……)」 答えを知っているシェーリオルは心の中だけで呟いた。 [*前] | [次#] TOP |