零の旋律 | ナノ

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「残念。うっかり着地に失敗してむごたらしく死んで下さったら私は狂喜乱舞して差し上げようと思いましたのに」
「……」
「まぁそんなどうでもいいことは置いておいて、魔物を実際にあの男が使役出来ていたわけではないようなので魔族が絡んでいるようですね」
「お前が言っておいて、どうでもいいのかよ」

 何時もの事でありながら反発しないといられないアーク。

「どうします主? 主の依頼はベルガ・オルクストを始末するだけ魔族が関与していても仕事は終わりですが」
「んー仕事以上の事はするつもりないし放置していてもいんだが」
「私は魔族がいるなら用があるんで、貴方達がここでさようならというのなら私は一人で行動しますが」

 カサネが口を挟む。カサネの目的はベルガ・オルクストが何を企んでいるかそして魔族や魔物が関与しているなら今後どうするかの処置を含め検討する必要があった。他の誰かに見つかる前に。
 王子がその事実を耳にする前に。

「そうだなぁ、仕事外だからどうこうするつもりはないが、魔族には興味あるな、何故最初は魔物に俺たちを殺すように命令していたのに途中でベルガ・オルクストを殺すように命じたのかとか」
「確かに不思議な出来事ですよね。そのまま主を噛み殺していればいいものを」
「お前は俺に対する殺意どれくらいあるんだよ」
「そうですねぇ殺意は10パーセント程度ですよ」
「え、案外少ない」
「殺意より無残にむごたらしく残虐に殺されて欲しいのと、虐殺されて欲しいのと……全部聞きます?」
「……遠慮しとく」

 どれがどの割合とは問えない。結論がわかっているからこそ怖くて。平然とパーセントで述べるヒースリアの性格が。

「貴方達は本当にそんな会話ばかりしていてよく飽きませんよね。なら魔族を探しますよ」
「お前はいいのかよ? 俺たちと同行していて、それが目的なんだろ?」
「私は別に独り占めしようとかそんな姑息なことは考えていませんし、第一相手の目的によって私は考えを変えます」
「例えば?」

 少しだけカサネは間を開ける。

「例えば魔族の目的が人族に対する復讐なら、復讐の芽は怱々に摘んでおきます。何か目的があり人族に加担している場合もまた同様に。まぁケースバイケースですね」
「ま、それが妥当か」

 立場により意見が代わるのなら、例え残酷な事を平然と告げていようとも――

 周辺を見回るが特に何もない。途中出会った人に対してアークは昏倒させるだけ。下手に騒ぎを大きくすることはしない。
 地下室を途中で発見する。乱暴に無理矢理開けられた扉、古びていながら脱出するのが用意ではない頑丈な造り。何かないと判断する方が無理なもの。

「当たりとしか言いようがないほど露骨ですね、露骨にしか表わす事が出来ない表現力しか持たないベルガ・オルクストに同情しましょう」

 ヒースリアが途中そんな事を告げる。
 地下室に入ったが何も無かった――否、無くなっていた。
 明らかに誰かを捕えていた痕跡が生々しく残っていながら者影はない。
 ちぎられた鎖をアークは眺める。それは無理矢理破った証。大量にある鎖から囚われていた者が逃げだせないように雁字搦めにしたことは容易に推測出来る。

「誰か逃がした……? 一体誰が、一足遅かったということですか」

 カサネの瞳が鋭く現状を見渡す。一体誰が此処に囚われていた人物を解放したか。


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