T 気がついたら後ろ預けていた相棒がいなくなった 苦楽を共にした親友が目の前から消えた その理由を言うこともなくある日突然 何故、何故、何故、何故、何故、何故と、答えのわからない質問を心の中で問い続ける 「大分自分勝手な理由やなぁ」 「じゃあ、逆に問おう。第一の街支配者榴華。お前は何のためにこの街を支配する」 「自分はなぁ、唯、危険から守ってやりたいんよ唯それだけ」 大それた理由なんてない あるのはちっぽけな望み、それだけ それが心の拠り所となる 「この街に来た時点で危険も何もないと思うがな。そんなことは百も二百も承知の上ではないのか?」 「自分はわかっていないんやなぁ。全てが正当な理由でこの地におとされるんとは思わん方がよいで? ……確かにな、あいつは主を殺した。けれど殺したから殺人者。それだけで決めつけるのはおかしいとは思わないか?」 自分を自分だとその存在を主張するような言葉ではない、飾らない言葉を口にする。 それが榴華の素。 「へぇ、変な喋り方とは思っていたけど、本当はそっちか?」 素に戻るということは偽るということを止めたということ。 一種の覚悟を決めた。もしくは変えたことになる。 しかし烙は別段恐れることもなく、今まで通りの口調、態度で話しかける。 「そうだな。俺の口調は本来はこっちだ。一つ先に言っておくぞ。白き断罪、お前らに目的があるように、俺らにも目的がある。だから相成れることはない。どちらかが勝つか負けるか、それだけだ」 「それには同意だな。第一の街支配者榴華。俺は白き断罪所属、絡(らく)」 地面に突き刺していた刀を絡は抜く。 榴華より近くにいる罪人には目もくれない。 罪人を殺すよりも、この支配者を殺すことを選んだからだ。 だから、絡は罪人を眼中にはいれない。眼の前の男にのみ集中する。 「柚霧。他の罪人を」 「わかりました」 榴華の後ろに、寄り添うようにいた柚霧は、榴華の邪魔にならないように下がり、呆けていた罪人達に支持を出す。誰も柚霧の指示に文句をつけない。それが生き残る術であり、自分を守る術。 榴華が大事にしている、守りたい人を傷つければ、榴華はすぐに牙を向ける。そして決して許しはしない。 死にたくないのに、自ら死期を進んで早めることをしない。 弱者は強者に従い日々を生きてゆく [*前] | [次#] TOP |