第参話:紫電が舞う時 一部の罪人達は、自ら住まう街から、別の街へ避難していた。行く先は第二の街。 罪人の牢獄そこは無法地帯である。けれど、無法地帯だからこその暗黙のルールも存在する。 それゆえにある程度の秩序があった街を罪人は振り返る。 炎上する街。けれど街を守ることではなく、逃げることを選んだ。 ――誰だって命が惜しいからね。 そんな冷笑が今にも聞こえてきそうだった。しかし罪人はそれを感じなかったことにする。 何故なら、目の前に行く手を阻むように白き衣に身を包んだ青年が、刀を地面に突き立てて立っていた。漆黒の髪は上で一つに纏められ肩まである。金色の双眸が罪人を冷淡に睨む。それは憎しみの炎が静かに燃えているように――。 ちっと舌打ちする音が聞こえる。罪人の一人が武器を手にとって構えた。戦闘が得意ではない罪人は、青年の冷たさに身を震わせる。 「ちょいまちいな。自分がそれをやるから一旦下がれや」 罪人達の後方から、声が聞こえる。一歩一歩確実に歩を進め、青年の前に姿を現す。 赤い髪を揺らしながら腕を腰に当て、優美に微笑む。それは絶対の自信があるように取れる。 その仕草は何処か偉そうで、人によっては不快感を与えるようなものだった。 けれど、罪人も目の前にいる青年――烙も不快感を示さない。 それどころか、烙は僅かに口元を綻ばす。 「自分は、第一の街支配者榴華や、自分はこの街に、この牢獄にそこまでの恨みがあるんかいな?」 愚問だと榴華は思いながら問いかける。 「あぁ、あるよ」 「なんや、言ってみぃ」 「大切な親友をこの地に落したからだ」 それは至極簡単な理由で それは理不尽な理由でもあった。 そして、だからこの罪人の牢獄に来た理由。 [*前] | [次#] TOP |