W 「何者ですの!? ……っ!?」 由蘭は声を荒げて泉に問うが返答はない。 そこに今まで泉の存在で忘れてしまっていた――戦闘をしているときには致命的な程に対戦相手から攻撃が降ってきたのだ。 それは今までの攻撃と代わり映えのしない雷。 防御壁を張る間もなかったため、慌てて回避しようと避ける。 間一髪で致命傷にはならなかったものの、右足を掠り、バランスを崩し地面に倒れる。 直に起き上がろうとしたが、右足から痛みが伝わりうまく立ち上がることが出来なかった ならばせめてと、二撃目が来る前に自身のまわりに防御壁を張る。 「守れ! 我が身を危険に晒す外敵より汝の守り神の力にて」 その声には焦りが混じっている。 しかし、防御壁はギリギリのところで築かれ、朔夜の雷から身を守った。 雷は由蘭を目がけて一直線に頭上から落下してきた。 そこには一切の情などないように、容赦なく。 しかし、由蘭の防御壁は見えない壁となり、雷は離散する。 朔夜はちっと舌打ちをする。 一方泉は、そんな由蘭と朔夜の戦闘など最初から目に入ってなかった。 その瞳はある一つのことしか映さない。 ――何度も何度も……どうして 悲痛な顔を見せたくなかった、だからばれないようにした けれど、何度も何度も悟られる それは、本当の心の叫びを聞いていてくれるからなのだろうか 果てなき迷宮の渦に囚われ、ゴールが見えない迷路を彷徨い 心は壊れていく。唯、唯一繋ぎとめる糸が目の前に存在する限り 完全なる崩壊を迎えなかった。唯それだけ けれどそれが、彼女にとっての救い だったのだ [*前] | [次#] TOP |