T ――気づくから前に人は進むのに、君はどうして気づいているのに後ろに下がる 唯、それは認めたくないから ――そう、人は強くなんかない だから、現実から目を背け続ける ――けれど、いつかは目を背けられなくなるよ 真白な少年は語りかける。 まるで全てを見通すように。 彼に告げる +++ まるで最初から無であったように。 障害物等存在しなくて、平坦な大地だけが広がっていたように崩壊していく。 全てを破壊しようとする音が響く。 強固なものですら脆く壊れ堕ちていく。 現象を理解する前に、全て崩れ去っていく。 音が響く。 建物が容赦なく破壊される音。 まるで通行の邪魔だと、そこにある全ての物を払いのけるように。 今まで築き上げられていたこの牢獄の建物が脆く崩される。 「……」 突然の第三者の乱入に自然と一時休戦になり、第三者に視線がいく。 建物を破壊しながら、真っ直ぐに歩く人物が姿を現したからだ。瓦礫が降って来るのも気にした様子は一切なく。目的地に向けただ歩く。目の前に障害物があればそれを破壊する。 白き断罪の仲間ではない。その姿は黒。 その人物に白き断罪は首を傾げ、罪人は顔を引き攣らせる。 「人が寝ているとこを起こすとは言い度胸だなぁ?」 その人物は郁と同等に否それ以上に真っ黒で、朔夜以上に機嫌が悪そうに頬が引きつっている。 手には黒い鞭が握られている。その鞭はゴミを払うかのように軽く振りながら、目の前にある障害物を払いのけていく。 「あー起きちゃった」 その時斎の思考にあったのは、彼をどうやって止めるかだった。 「泉……」 郁はその人物の登場に、表現しにくい表情をする、そしてその名を呟く。泉(いずみ)と。 [*前] | [次#] TOP |