零の旋律 | ナノ

T


 ――気づくから前に人は進むのに、君はどうして気づいているのに後ろに下がる

 唯、それは認めたくないから

 ――そう、人は強くなんかない

 だから、現実から目を背け続ける

 ――けれど、いつかは目を背けられなくなるよ

 真白な少年は語りかける。
 まるで全てを見通すように。
 彼に告げる


+++


 まるで最初から無であったように。
 障害物等存在しなくて、平坦な大地だけが広がっていたように崩壊していく。
 全てを破壊しようとする音が響く。

 強固なものですら脆く壊れ堕ちていく。
 現象を理解する前に、全て崩れ去っていく。
 音が響く。
 建物が容赦なく破壊される音。
 まるで通行の邪魔だと、そこにある全ての物を払いのけるように。
 今まで築き上げられていたこの牢獄の建物が脆く崩される。

「……」

 突然の第三者の乱入に自然と一時休戦になり、第三者に視線がいく。
 建物を破壊しながら、真っ直ぐに歩く人物が姿を現したからだ。瓦礫が降って来るのも気にした様子は一切なく。目的地に向けただ歩く。目の前に障害物があればそれを破壊する。
 白き断罪の仲間ではない。その姿は黒。
 その人物に白き断罪は首を傾げ、罪人は顔を引き攣らせる。

「人が寝ているとこを起こすとは言い度胸だなぁ?」

 その人物は郁と同等に否それ以上に真っ黒で、朔夜以上に機嫌が悪そうに頬が引きつっている。
 手には黒い鞭が握られている。その鞭はゴミを払うかのように軽く振りながら、目の前にある障害物を払いのけていく。

「あー起きちゃった」

 その時斎の思考にあったのは、彼をどうやって止めるかだった。

「泉……」

 郁はその人物の登場に、表現しにくい表情をする、そしてその名を呟く。泉(いずみ)と。


- 81 -


[*前] | [次#]

TOP


「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -