零の旋律 | ナノ

]V


 斎が札を両手に構え、白圭が大剣を両手に握り、郁が片手片手に刀を構えたときだった。
 三人より、後方から突如として爆発音が響く。
 それは、この近くで闘っていた篝火や想思ではない。
 それよりさらに後方で、とどまることなく、何かと何かがぶつかり合うような音が連続して起こる。


「先ほどから同じような攻撃を繰り返していらっしゃいますのね、馬鹿の一つ覚えですか? 劇がないですわよ」

 何が起きていると、彼らが思っている時だった。
 爆発音に続いて二人の人物が、一定間隔の距離をとって戦闘をしているのが確認できた。
 一人は水色の髪を上で縛り、途中から左右に分かれている。白い衣に身を纏い、すらりとした足はミニスカートを履いていることによってさらに強調されている。蒼い目が目の前の人物に集中している。
 もう一人は白髪に赤いメッシュが右の一部にだけあり、赤い瞳は殺気がこもっておいる。
 上着のポケットに手を入れながら、戦闘をする姿は偉そうであり、相手によっては挑発行為だととられるだろう。
 二人とも――由蘭と朔夜は共に、一定距離以上は近づかないようにしている。また、双方相手に近づく気はなかった。、遠距離からの攻撃を得意とした典型的な術者タイプ故に、接近戦は不得意であった。


 ――突如として消えた大切な人
 再び目の前に姿を現すのなら
 ――突如として消えた大切な人
 何故今更姿を現す


 由蘭は本を片手に術を唱える。
 そこに具現するは、ヒトの成りをした術で作られた人形
 彼らは朔夜を狙い歩む

 朔夜はポケットに手を入れたまま、術を唱えるのではなく、念じて雷の刃をそこに落下させる。
 人形は砕け散り、跡形も無くなる。

 由蘭は再び術を唱える。
 先ほどとは違う種類の術を、朔夜は再び術を念じる。
 それは先ほどの変わらない術を

 相殺し合いながら、二人は場所を移動し続ける。
 常に一定距離を保つため。
 近づきすぎず、遠すぎず。

「……爆円の力において、飛翔せよ」

 由蘭は唱える。
 頭上を浮遊するのは数十の爆弾の数。
 朔夜は顔色が悪くなる。一回で、爆弾を処理するには個数が多かった。


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