零の旋律 | ナノ

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「あぁ、本当にもう! 何処にいるんだか」

 斎は黒い塊を見かけ次第、札を放ち結界の中で爆発させていたが、黒い塊がなくなる気配は一向に見せない。それでも、個数は減っているのだろう、先ほどから爆発の音は減っている。
 斎は札の枚数を確認しながら、次から次へと放っていく。
 朔夜と斎が処理している場所以外では、爆発音が響く箇所と全く聞こえない箇所があった。音がしない場所には自分たちと同じように術にたけた罪人が対処しているのだろう、と判断する。
 この街の実力者は自分たちだけではない。他の罪人達も協力して街を守ろうとしていた。

「……なんだありゃ」

 ふと、篝火たちはどうなっているのかと、そちらの方向を見ると何をやっているのかまでは判断出来なかったが、しかし紅い刃が無数に次から次へと上から下へ突きだしているのが見て取れた。

「……さっきのやつだと、篝火たちじゃ不利だ」

 何せ、それが見えるのは上空なのだから。
 斎は一瞬どうするか悩んだが、直ぐに篝火たちのところへ引き返した。
 斎にとって、大切なのは街よりも友だった。
 そもそも斎は朔夜のように街を愛しているわけではなかった。
 だから、二つを並べたとき天平が傾くのは、この街で出来た友のほうであるのが当然だった。

「朔夜はどうするかな」

 この状況を何かしら朔夜も察知していると、斎は判断していた。
 口は悪いし、態度はでかいし、見ていてムカつくような言動も多いけれど、決して馬鹿ではない。
 口は悪いけれど、礼儀作法は何故かしっかりしている朔夜。
 食事を一番行儀正しくいつも食べる。普段の口の悪さからは想像がつかない。
 こんなことを本人の前でいったら激怒するだろうなと思いながら斎は篝火たちのもとへ走る。
 一つの思いを抱えながら。

「(ごめんね、別に君たちを天平にかけたわけではない。でも……俺は白き断罪を裏切ったことを後悔していないよ)」


 唯、大切な人を守るために振るう刃に後悔はない
 このまま大切な人が自分の目の前で絶望していくのを見るくらいなら
 このまま大切な人が自分の目の前で崩れおちていくのを見るくらいなら

 そんなもの(原因)を滅ぼしてしまえ


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