零の旋律 | ナノ

V


「朔夜、俺は結界の中で爆発させるけど、朔夜はそのまま雷で爆弾ごと爆発させちゃって」
「おう、ってもそれしか俺はできねぇけどな」
「……二手にさらに別れよう」
「遠距離術師同士、同じに固まっていても仕方ないわな」

 爆発音が響く方へそれぞれ二手に別れる。一緒にいた処でやることは変わらない。ならば個々に退治するだけ。お互いの実力を、能力を信頼しているからこそ、一人でも大丈夫だと信じられる。
 二人は走る。黒い塊を見付ける度に、朔夜は上から雷の術を放ち建物にぶつかる前にその衝撃で爆発させてしまう荒業を行う。
 斎は札を投げつけて結界の中に閉じ込めて、爆発させ周りに被害を出ないようにする。
 方法は違えど、二人は周りに被害がないように処理をしていく。
 罪人の牢獄第一の街を守るために、全ては生き残るために。


「(……由蘭のやつ、何処にいる)」

 斎は黒い塊を見つけ次第処理しながら、視線は術者――由蘭を探していた。この術は術者を見つけて解除させるか、術者の力が底をつくのを待つしか方法はない。だが、後者はほぼ不可能に近い。術者の力が底をつく頃には当に第一の街は滅んでいる。
 由蘭のことを知っているからこそ、そう確信出来た。


 ――あぁ、見つけた見つけた見つけた
 狂え狂え狂え


「篝火、どう行く?」

 郁はすらりと流れるような動作で二刀あるうちの一刀を抜く。

「……お前なぁ、相変わらずだな」
「これが、仕事の一貫だ。といえば聞こえはいいが、単に私の癖だな」

 郁は篝火を追い越す。一気に跳躍をし紅髪の白き断罪の背後へ回る。

「!?」

 想思は一瞬だけ間合いに入られたことへ驚きを見せるが、すぐに冷静さを取り戻し対処する。
 髪の毛を刃上から直に、鋭い針のように変化させ地面へと全体を覆うように突き刺す。
 それは硬質で郁が切り出した一閃を容易く防いだ。

「(刃物で切れないだと!?)」

 すぐに郁は二撃目を加えようと一歩右足を下げ間合いを取りなおし、再び縦に一閃するが尚も髪の防御壁はびくともしない。
 ならば、と郁は相手から一メートルくらい距離をとる。

「篝火、殴り飛ばせ!」

 斬撃が効かないのならば打撃だと郁は叫ぶ。
 刀で切りつけた時の感覚で言うなら、刃物同士がぶつかりあう金属音はしなかった。
 ならば単純に術で髪の性質を変化させたものだと判断した。刃物でないならば、素手で殴ったところで切り傷になることはない。

「おりゃっ」

 郁に気を取られている間に、篝火は想思の眼前までやって来ていた。そして、篝火は左足に力をいれ足場を固定し右手で力強く殴りかかった。

「ってぇ!?」

 しかし、篝火は直に後方へと下がる。
 殴った右手を上下にと振り、痛みを拡散させようとする。刃物ではないならと殴ったが想思の髪の強度は高く、篝火の右手痛みを覚える。


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