零の旋律 | ナノ

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「罪深き人よ、白き断罪を下そう」

 街が崩れおちる。
 脆くあっという間に。
 建物は爆発により炎上し辺りは火の海とかす、建物が人々の通路を挟み逃げゆく人を逃がさないように――まるで意思を持つように。

 最初こそ呆然としていた罪人だったが、このままでは滅びると――このままやられるわけにはいかないと、其々行動に映る。
 殺害に自信のある罪人――主に殺人罪状の罪人は目の前に現れた、敵としか思えない青年を殺しにかかる。あるものは剣を、あるものは銃を、あるものは槍を其々自ら得意とする獲物を持ち進む。
 一歩一歩進むごとに、青年の姿が明白に映る。
 青年も自分たちに敵意を持つ、そして排除にやってきた罪人に対し臨戦体形をとる。 そして普通ならあり得ない光景を罪人は目の当たりにする。

「こんな術をしらねぇよ」

 発せられた言葉には絶望の声色が混じる
 白き断罪の一人――想思(そうし)彼の長髪は凶器と変貌し、赤く染まる。
 羽のような形状になり。それでいて斧のような重みと鋭さ、刃となり尖る髪は伸縮自在に向かい来る罪人を切り裂いた。
 その姿は異様であり、術に精通している術者から見ても、その仕組みが理解出来なかった。

「何者だよ……」

 罪人の一人は呟く。
 弱い者は生き残れない弱肉強食の世界で、こうもあっさりと罪人の街と罪人は滅ぼされていくものなのか。
 今まで築いてきたものを一瞬で還されるようで、無残に。
 罪人は絶望する。

「君らに僕からの恨みはない、けれど彼ら(白き断罪)は僕(失敗作の人形)を拾ってくれた、だから君たち(罪人)は消えるがいい」
 
 目的はなくとも理由はある
 理由はなくとも目的はある

 さぁ、消え失せろ滅び失せろ全ては浄化のままに

 愚かしき罪を浄化せよ

「どうするっ……このままじゃ全員殺される」
「あぁ、俺にとってはこいつ等が生きてようがいまいが大した感傷はねぇ、けれど」

 朔夜は一区切りし、一呼吸してから再度口を開いた。

「人が住まわなければそこは街ではない」

 愛する街を守るためなら、人をも守ろう。

「なんだか本当に朔は謎だな、『ヒト』より『マチ』を愛するか」
「……お前らはまた別だよ」
「ふふ、そうか」

 郁は微笑する。
 街を愛する朔夜が人をも見てくれるかと。
 ならば、闘うだけ。
 仲間とともに戦うだけ。

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