零の旋律 | ナノ

第壱話:断罪の訪れ


 始まりはいつも突然で、そして終わりもいつも突然訪れる。
 
「驕れる罪の象徴よ、その身に宿した消えぬ刻印よ、この地から消え失せるがよい」

 それは唐突に視界に映る。
 空から地上へ青年が舞い降りてくる。その動作は滑らかで、落下しているわけではなかった。
 その背に翼があると錯覚させる印象を抱く。
 罪人たちはその姿に目を奪われる
 罪人たちはその姿を見る
 何処か幻想さを生み出す出来ごとに何事かと
 興味本意か恐怖か畏怖か

 青年は舞い降りてくる
 篝火たちより数百メートル程離れた街の中心部に。
 紅の髪を靡かせ、白い服がその存在を表す。黄緑色の双眸はゆっくり瞼を開きと周囲を見渡す。

「白き断罪!?」

 容貌がはっきりと映らずとも、その白は映る。
 篝火たちは急いで白き断罪を殺すために走りだそうとした。

「さぁ、消えてゆくがいい、愚かしき生の塊よ」

 突如後方から爆発音が響く。反射的に後ろに振り返ると、街の端の方から煙が立ちあげる。
 それは単なる開始の合図だったと言わんばかりに、それを境に次から次へと街の四方から黒煙が上がる。
 突然の出来事に混乱した一部の罪人は悲鳴を上げた。一か所だけならば、今まで起こったことがないわけではない。しかし今回は規模が違った。此処まで大々的に破壊する罪人は存在しない。
 自らが住まう街を破壊することがないからだ。滅びてしまえば、それは罪人の死に直接繋がる。
 生にしがみ付いているからこそ、こんな荒れた大地で未だに生き続けているのだから。
 自ら死期を早める真似を罪人はしない。
 だからこそ今起きている事態が認識出来ずに混乱する。
 その混乱も作戦の一つだとは知らずに。

「次から次へと爆発だと!?」
「……由蘭だ!」

 斎は冷静に誰が行っているのかを突き止め叫ぶ。
 嘗てこの術を見たことがあった。術を完成した時、嬉しそうに、純粋無垢な笑顔で自分の元へやってきた由蘭の笑顔が脳内に再生される。
 それを振り払うように顔を左右に振る。今は過去の郷愁に浸っている場合ではない。
 現状を理解している者が動かなければ忽ち悪化する。


 唯、一緒にいたいから、闘う術を覚えた。
 それは大切な人を守ることに繋がる。
 決して、人の命を奪いたいための術などではない。

「何故、由蘭だと?」
「昨日戦ったように由蘭は後方支援の術師なんだ。しかも個数を大量に一度に作る」
「昨日の操り人形みたいなやつらのことかっ」
「それと同じ要領で爆弾を大量に生産して、意思を持たせてあちらこちらに、それも無造作に放っているんだ」

 会話は自然と早口になる。
 爆発音が四方八方から響き砂塵が舞う、そして音と悲鳴と絶叫で会話が聞こえなくなりそうになる。日常であれば、普段であれば耳を塞いでいたくなる。建物は音とともに崩壊していく。

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