T ――俺は俺のしたことに後悔をしていないから今ここにいる 「なら、足手まといになんかなるんじゃねぇぞ」 言葉とともに、朔夜の部屋の扉が開く。 そこには普段ならまだ睡眠中の朔夜が起きていた。 普段のワイシャツではない、黒を基準とし、肩を露出した服に身を包んでいる。 その様子にしばし斎は唖然とする。 まさか、朔夜が起きているとは思わなかったからだ。しかも面倒が代名詞の朔夜が着替えをおえ、髪もとかしている。 本当に今日は槍が降るんじゃないかと斎は思わず思ってしまう。そして僅かに苦笑する。 「朔こそ足手まといにならないでよね。遠距離は強いけど近距離はからっきし弱いんだから」 「なら、てめぇらが、俺を守りなサポートならしてやるよ」 自身満々に言い合う二人に、何処からその自信さが湧いてくるのか謎な篝火だった。 だが、後衛が前衛を守ってくれるなら力強いことこの上ない。 何故なら、この二人になら後ろを任せて攻撃に自分は専念できるから。 そして、それはこの場にいない篝火と同じく前衛で戦う郁にとっても同じことだろう。 かけがえのない仲間であり、背中を預けることが出来る仲間でもある。 三人は朝食を食べ終え、暫く食べたばかりで運動はきついということで休息をはさむ。 10時を回ったころ合いに、玄関が開く音がした。 チャイムを鳴らさないで勝手に入ってくる、しかもこんな時間からは唯一人しか思いつかなかったため、特に構えることもしないで待っていると、足音が二つ聞こえ始めた。 「二つ……?」 一瞬誰だと顔を顰める。 しかしリビングにやってきたその姿を認めると、何故ここにと再び顔を三人は顰める 「やほーお邪魔しまあーす」 「お邪魔します。榴華、チャイムは鳴らすべきですよ」 「ええやん、ええやんな? 篝火はん」 独特な口調とノリのよい態度で現れたのは、罪人の牢獄第一の街支配者榴華(りゅうか) その後ろから、やってきたのは榴華の秘書をやっている女性柚霧(ゆずぎり) 榴華は真っ赤な長い髪を膝まで伸ばし、それを一本に縛っている。 黒いワイシャツに黒いズボン、腕に真っ赤なベルトを巻き、首にはシルバーアクセサリーを身につけている。翡翠の瞳が篝火たち三人を順番に見回す 「この家の主は俺だって」 ぼそりと朔夜は呟く、篝火はその言葉に苦笑する。 [*前] | [次#] TOP |