零の旋律 | ナノ

第四話:決意


 廻り廻って最後に出会うのが運命であるのなら
 ――俺はどうするべきなのだろうか

 考えても考えても今はまだ結論を出せなかった。
 否、正確には結論が出ていたのかもしれない。
 それでも心は結論を出すことを拒んでいるのかもしれない。
 だから結論をいまだに出すことが出来ずに苦しむ。
 例え結論を出したところで変わらないことを承知しながら。

「おはよう」

 朝、斎はリビングに出ると、そこには斎に寝る場所を奪われ布団を引いて寝ていた篝火が、既に起床していた。
 布団は片付けられ、朝ご飯の準備を着々としている姿だった。
 何度も見た、見なれた光景。
 その光景が少し眩しく感じるのは、心境のせいだろうか。

「おはよう」

 いつもと変わらないように見える斎に、篝火はいつも通りの返事をする。
 例えいつもと違っていたとしても、篝火は普段と変わりなく接しただろう。
 それが斎の心を安心させる。

「……俺がここに来る前に何をやっていたか、検討ついているよね」

 決心したように斎は口を開く。
 篝火は黙って頷く。

「……由蘭と絡は、俺の仲間だった」

 半ばそれを確信していた篝火は何も口を挟まない。
 喋ってくれることを妨害することはない。
 唯、無言で耳を傾けよう

「けど、俺が裏切ったんだ。嘗て仲間だった人たちを俺は殺した」
「!?」

 斎がここにきた罪状は知っていた。殺人罪。
 けれど、まさか同じ組織の“仲間”を殺したとは篝火にとって予想外だった。斎が仲間思いだと知っているからこそ。

「いいのか? ならお前は嘗ての仲間と闘うことに、殺し合うことになるんだぞ」
「大丈夫。一晩思考したから決めたことがある」

 深緑の瞳から強固なる意思が映る。

「俺が決めたことを俺は後悔しないよ」

 篝火に、笑ってみせる。
 それは大胆不敵ともとれる微笑みだった。


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