零の旋律 | ナノ

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「ここって朔の自宅ってより篝火の自宅に朔が居候しているって感じだよな」

 お茶を人数分入れてリビングにやってきた篝火に向かって郁が微妙に笑いながら話しかけてくる

「あはは……むしろ家政婦みたい」
「あーかもしれないな」
「否定はしてくれないんだ」
「否定する要素があったら否定してやったけどな」
「ないのか」
「あぁ」

 篝火から淹れ立てのお茶を貰い、郁は口に運ぶ。
 こうして篝火からお茶を貰うのも何回目だろうかと考えるが、回数を数えるだけ無駄だとすぐに考えるのを止める。

「でそっちはどうだった、こちらは白き断罪の組織に組する由蘭ってオカマにあった」

 情報交換するため、最初に郁が今日起きた出来ごとについて語る。
 もっとも郁の兄、泉に聞いた方が手っとり早いのだろう、そういったのを泉は専門としている情報屋だ。
 しかし、そうしないのは泉が対価に見合った情報しか教えないから。という表向きの理由もあるだろうし、内心では自分で行動したい、そういった心理が働いている部分もあるだろう。


「オカマじゃなくて男ね」

 そこに郁と一緒にいた斎が修正を入れる。

「はぁ? オカマか男どっちだよ」

 朔夜が困惑しながら突っ込む。オカマなのか男なのか、それだけで大分違ってくる。 どちらにしろ性別は変わらないが。

「本人は女装でもないしオカマでもないっていっていた」
「なら、男じゃねぇかよ」
「……ミニスカだった」
「ぶっっ……はぁ!?」

 思わず朔夜は郁の発言に飲んでいたお茶を吹き出しそうになる。
 男がミニスカ姿を想像する。どんな男だかわからないからとりあえず篝火で。
 とてつもなく気持ち悪くなったので、これ以上の想像を朔夜はやめて頭からその想像を消去した。

「いや、なんというか一人称がわたくしで丁寧な口調で髪の毛が私らより遥かに長くてミニスカの男」
「……」
「唯、女にしか見えないような外見をしていたから、問題はないと思う」
「疑問形かよ」

 由蘭の容姿を思い出す。
 男だといわれても納得できない。
 けれどと郁は考えてしまう。
 実はやっぱり女のじゃないだろうかと。非常に少女らしく、誰もが振り返りそうな可愛らしい容姿。
 一度あったらその容姿を早々忘れはしないだろう。


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