T ――お前……一体何をした 雨が降る日辺りは薄暗い 地面に白き衣が鮮血に染まっている。 その傍らにいるのは――親友 悲しみや寂しさを無理やり覆い隠した笑みを親友は作り上げていた。 「……夢華(むか)俺は罪人の牢獄に、宣戦布告だけではなく行動に移してくる」 絡は決意する。覚悟して訪れた地。目を背けたくて、事実を認めたくなくて。そんな自分が嫌になって――迷って。でも絡は自ら決め罪人の牢獄に足を運んだ。 その瞳が映し出す心情が変化したことを認めた夢華は優しく微笑んだ。 「行ってらっしゃい」 「お前は行かないのか夢華」 「……僕は、まだ行く時ではないから」 視線を絡から外し、夢華は離れる。 そこに絡と同じく仮眠をとっていた由蘭が現れる。 外に出ても時間はわからない、けれど時計を見れば時刻は夕方を指している。 「どうかされましたの?」 「由蘭、罪人の牢獄……第一の街を滅ぼしに行くぞ」 一瞬、絡の言葉に驚いた由蘭だが、直ぐに表情を改める。 「わかりましたわ、絡様。参りましょう」 「あぁ。白圭は」 「あちらにおりますわ」 そう言って指をさしたのは、由蘭が来た道の先だった。 「有難う」 絡は由蘭の前を通り過ぎて、白圭のもとへ進む。 由蘭もその後に続こうとしたが、眼前に自分より身長の高い夢華が立っていることに気がつく 「どうかなされましたか?」 「……」 「な、なんですの!?」 唯じっと見つめてくるだけの夢華に由蘭は思わず後ずさりをしてしまう 儚く端正な顔立ちが、自分を見つめているから。 「……悲しみと嘆きと裏切りで閉ざしたのに、再び出逢ったことに揺れ動き、それは心を惑わせるよ」 「……っ」 それだけを言って、夢華は絡とは逆方向に進む。 「お待ちになって下さいませ! それは……一体どうしておわかりになられるのですか!」 由蘭の叫びに反応はなかった。 「……斎様」 由蘭は、あの時あった斎の顔を思い出しながら、絡と白圭のもとへ進む。 一人になった夢華は、この先で仮眠をとっているであろう他の白き断罪の元へ向かう。 由蘭の術で作られたこの場所は結構な広さを持っている。 しかし、暗いため明かりは手放せない。その為通路の周囲には松明に炎が宿されている。 それも術で作られた特別な炎。燃え尽きることはない炎。 「どうして、大切だと認めていながら、大切じゃないと否定するのだろうね」 [*前] | [次#] TOP |