第参話:嘗ての仲間 +++ 「その瞳綺麗だね」 誰もが忌み嫌った瞳を褒めた唯一の人 幼い自分、幼い――これは夢だ、これは。この場に彼はいない。 誰もが忌み嫌ったその色を、綺麗だねとほほ笑んでくれた人は――もう目の前にいないのだから――夢よ覚めよ、現実の世界へと引き戻して。悲痛な声にならない声で叫んだ。 「……!」 目覚める。何かを見ていた気がする。懐かしくて忌々しくて――寂しい。額に手を当てると汗ばんでいた。 「大丈夫?」 「……あぁ」 夢見が悪い。そう思いつつ、横になって仮眠をとっていた身体を起こす。 いつもより身体が重く思うように動かないのは、夢のせいだろうか。思わず、瞳を手で覆い隠してしまう。 「嘘、本当は大丈夫じゃない」 「……大丈夫だってんだ」 絡はぶっきらぼうに答える。 「そうやって隠している心は、いつか悲しみに耐えきれずに崩落するよ」 「っ……そんなこと、どうしろっていうんだよ……」 絡は目の前にいる同じ『白き断罪』に所属する、人物を見る。白い。真っ白い。儚い――。その人物は、悲痛な顔をしている烙に近づき、密着するようにくっつく。 烙の瞳に、長く白い睫毛は綺麗に映る。瞳も白く、左目は儚げな表情を映し出す。 右目は治療用の白い眼帯で覆われていて、その瞳を見ることは出来ない。 髪の毛は白く短い。癖っ毛で、所々跳ねている。白い髪に真っ赤な薔薇の髪飾りをつけている。白き断罪――その名がそのまま会うような容姿。幻想さを存在から醸し出している。その存在自体が幻ではないのかと思わせるような儚げな雰囲気を纏う。 「心が崩落する前に癒さないと、君のその心は耐えきれなくなる。失ったものが大きいから」 「……わかっているよ、わかっているけどよ」 「失ったものに手を伸ばせばもう一度届くかもという希望と、無理だという絶望が君の心を支配している」 「……どうすれってんだよ、俺に」 ――願ったってあの日々は返ってこなかったんだ。 「探せばいい」 悲痛な顔をして、真白の人物――夢華を見る絡に、淡々と告げる。 ――綺麗な瞳、好きだよ そう言ってくれたあの日のこと、あの日の言葉は一生忘れない けれど、もう傍にいないのなら 今度はこちらから声を掛けるべきなのか ――何故、俺を裏切ったと [*前] | [次#] TOP |