U 「もっと聞きたかったが、どうせあれ以上ははなしてくれないだろうな」 「機密事項ってことになるのか?」 「だろうな。白き断罪は戦闘訓練された武道派集団だし。何人来ているからもわからない。謎だらけだな」 そう言って篝火は自嘲気味笑う。 「全くだ。だが、俺はこの街を壊すのなら許さない。あちらがいかに正義だとしても、こちらがどんなに悪人だとしても、俺は街を壊すものを――許さない」 朔夜にとって大切なものは街だから。生きてきた街を滅ぼすことなどはさせない。 「おぉ、怖いな」 「俺らは罪人の牢獄に住まう罪人、どう転んだって悪人さ。けれど、悪人にだって守るべきものはある」 そう断言する朔夜の瞳はどこか悲しげだった。 篝火はそれに気付いていながらもそのことには触れない。人には触れてほしくないことの一つや二つ、あるものだから――いつか、話してくれればそれでいい。今はまだその時でなくても構わない、ゆっくりでいい。 篝火は上着のポケットに手を入れ、懐中時計を取り出す。 現在時刻を見るとまだ昼前。時間が長く感じられる。 「とりあえず、昼にするか」 「そうだな」 「よし、昼飯はパンで」 「朝もパンだったじゃねぇかよ」 夕飯もパンの予定とは言わない。 再び、街の中心部へと歩き出す。 廻り廻って 静かに静かに糸が解れていく 誰かが直そうとしても 治らない 解れた糸を治せるのは 解れさせた本人たち次第――なのかもしれない 廻り廻る [*前] | [次#] TOP |