零の旋律 | ナノ

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 言葉の端々に感じる篝火の冷たさを朔夜は殆ど見たことがなかった。何かあったのだろうか――と勘繰る程に。

「ならば、先に政府を改革するべきじゃないか?」
「白き断罪の中にはさ、ここの連中に、ここに来る前に罪を犯した罪人の被害者がいるんだよ」
「なら、それは復讐か――復讐なら、思う存分かかってこいよ」
「挑発的だね」

 絡は服の袖の中に手を入れる。
 今ここでとっさに攻撃すれば殺せるだろうかと、頭の中を一瞬よぎる篝火だったが、今は情報が優先だった。

「先に喧嘩を売ってきたのはそちらだろ」
「ご名答。でも根本的なものはそちらにある」
「ご名答。つまり、赤と白の争いか」
「赤は血に染まりし罪人。白は闇を断罪する。黒は闇を生み出す政府だな」
「白と赤は争い、黒は深く染まりゆく」
「だから、白は赤を滅ぼそう」
 
 絡は二人から背を向け歩き出す。

「宣戦布告はしたよ。このことを、支配者に伝えておくといい。俺たち白き断罪は罪人を殺す」

 二人は絡を追わなかった。
 街から離れ、砂に足を踏み入れる絡を。
 唯、その背を眺める――

「ならば、受取ろう」

 篝火はそれだけを返した。
 見る者をぞっとさせるような冷たい冷えた表情に、暫くの間朔夜は篝火に何も言えずにいた。
 やがて、篝火が朔夜のほうを向いたとき――普段の保護者に戻っていたことに朔夜は安堵する。

「なあ……白き断罪って何だ?」
「政府直轄組織だよ。簡単に言えば軍人。戦闘集団。その戦闘能力は一人一人突出している。政府を支えている台の一つさ。名前の由来は白き衣を着て、政府に仇名す者を断罪することからだ」
「なら何故――白き断罪は罪人を殺す」
「んー」

 顎に手を当て、篝火は考える。
 ここを生かしているのは間違いなく政府。
 罪人は政府にある意味生かされているに過ぎない。
 この腐敗した大地では、政府の援助なくしては機能しないだろう。
 最も各街だけならば、数日間は持つかもしれないが、そこまでは支配者ではないからわからない。

 白き断罪の目的は本当に罪人を殺すことなのだろうか――
 罪人の牢獄の大地は腐敗し、砂は毒を含みとても人が生活できるような空間ではない。
 各街が生活空間として機能しているのは、特殊な術で空気を浄化し毒が侵入しないように結果が貼られているからだ。そして、そんなことをして罪人を影で生かしているのは政府そして罪人の牢獄支配者。
 政府は公にできない非公式なこと――人が本来なら躊躇するような仕事を罪人に任せる。
 その見返りとして罪人は罪人の牢獄で生きていく為の最低限の物資等を支給して貰っている。否罪人を生かして貰っていると――嘗て罪人の牢獄支配者が篝火たちに教えた。


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