Y +++ 篝火と朔夜が絡と対戦をしているとき、斎と郁は街を徘徊していた。 街中で殺しが行われているのなら、街に白い衣の集団がいてもおかしくはないだろうと、街の外へ出た篝火と朔夜とは考え方が少し違った。 「ところで、斎よ、何度目だ?」 「さぁ、俺は数えていないけど、君と行動するようになってからは二回目ってことかな」 「その服が原因だという自覚は?」 「大ありだけど、これは俺のケジメ。白い服を着続けることが」 「何をいっていやがるんだよ」 街を徘徊していた今、目の前にいるのは数名の罪人。 あまり見ない顔だから、最近この街に来た新人の部類だろうか。 無数の傷跡が、気迫が、その罪人は唯の力無き罪人ではないことを物語っている。 白の殺人が行われていることは、引きこもりをしていない限り、この街に限らず罪人の牢獄内では広く知れ渡っている事件だった。 だから襲われまいと、白の殺人をしていないものは、白い服や白を身に纏うことを止める。 しかし、斎は白の殺人が行われていようと、決して白い服を着るのを止めなかった。 故に、白の殺人集団に斎は間違われて、罪人に襲われる。 隣にいるのは白ではなくて黒だろうと郁は呆れる。 「全く、ふざけるな」 郁は二度眼の襲来に、呆れ呆れしていた。この街に長くいる罪人ならば斎の存在は大抵誰でも知っているものだ。しかし此処最近やってきたばかりの罪人ならば、斎のことを知らなくて無理もない。 だが、この街に住む以上、罪人である以上、法律等存在しない以上――否。何処であろうと、知っていた方が得することは無数に存在する。 斎の存在を、実力を知っていたなら彼らはこの場に現れはしなかっただろう。もっとも実力に絶対の自身を持っているからこそ、知っていても襲ってきた可能性も否定出来ないが。 罪人の牢獄には暗黙のルールが存在する。そのうちの一つにして最たるものは恐らく、名字を名乗らないこと――もしくは自分の身分を明かさないことだろう。だからこそ、篝火たちは其々相手の名字を知らない。 郁は腰に差してある二本あるうちの一つを取り出す、白とは対の真っ黒の刀を。鈍く煌めく黒の輝く刃を相手の方へ―― 「まぁまぁ、白き断罪じゃないんだしそれくらい簡便しなよ」 襲われたというのにどこ吹く風の勢いで、飄々と斎はしている。唯、その手には数枚の札が指と指の隙間に落ちないように挟まっていた。 「さっさと片付けてしまえばいいだけなんだからさ」 「……それは同感だ」 二人は目の前に罪人に向き合う。 今片付けるのは向かってきた罪人。探すのは白の集団。 向かってきた罪人を殺しはしない。ただルールを知らなかっただけ、それが命取りだとしても。 斎も郁も向かってきた何も知らない罪人を殺す程冷酷ではない。 かといって二人は殺しに躊躇するような性格でもなかった。 敵と相対する時、躊躇すればこちらが負ける それを二人は知っているから。 特にこの罪人の牢獄では―― [*前] | [次#] TOP |