X 刃と拳は避け合い、そして交錯する。 術と術は火花を散らし、そうして相殺する。 「……あーなんだ面倒な」 絡は後ろに下がりそして前へ進む。 刀を振り下ろし、切り裂き、そして白き刃を放つ。 篝火は前に進み、重心をずらして攻撃する。 拳を、蹴りを、不規則に相手に次の攻撃の予想をつきにくくするために。 朔夜は唯その場から戦局を把握しながら、雷の術を落とす。時には攻撃のため、時には防御のため。 そうして時間は僅かにだが確実に流れていく。 お互いに対したダメージを与えることなく。与えられることなく。平行線が続く。 実力が均衡しているから、平行線がいつまでも続く。 「地味に強ぇのがムカつくことこのうえねぇ」 弱ければ直ぐにけりをつけられたのにと、朔夜は呟く。 しかし弱いわけがない。ならず者達――罪人が住まう弱きは生きていくことが出来ないような、弱肉強食の罪人の牢獄で、罪人を一人で複数を殺す腕前は伊達ではない。 現に、篝火と朔夜の二人がかりでも決定打を未だ与えてはない。 だが、実力差が目に見えるほどあるわけではない。互角。それは勝敗を長引かせる。 「わざわざでてきてやらなければよかった」 あの二人クラスを一人で相手にするのは少々骨が折れると絡は考え始める。 唯、隣にいてくれるだけでそれだけで、生きていくことの意味を見いだせた気がしたのに ――今ある俺唯のカラクリ人形だ。君がいない、この時、俺の心は空っぽになる ――どうして裏切った 心の中の悲鳴は誰にも聞こえない ただ、時が過ぎても治ることはなく 徐々に徐々に心は壊れていく [*前] | [次#] TOP |