U 現状相手が何者かわかっていない状態で単独行動するのは危険極まりない。だが、二人となれば状況も変わって来る。何より――仲間の力を信頼している。 「で、チーム分けはどうするんだ?」 二組に分かれるとなれば当然、チーム分けが必要となる。 「俺と篝火、斎と郁でいいだろ」 「それはお前が単純に斎と一緒に行動したくないだけじゃないのか?」 郁の突っ込みに当たり前だと頷く朔夜。普段なら、何か言い返す斎も同意とばかりは何も言わない。 朔夜と同じ意見なのだろう。というより、斎としては遠距離が得意な自分と朔夜が一緒に行動するよりも、バランスを合わせた方がいいと判断したという要素も含まれている。 「当たり、よくわかったな」 「わからねぇ馬鹿はいねぇだろうが」 「ははは、そりゃそうだ」 「だが、私とて行動を共にするなら篝火がいいぞ」 郁も朔夜同様行動するなら篝火が言い、と言い始める。それを傍目に斎は俺ってそんなに嫌われているの? と冗談めかして篝火に話しかける。 「断る。俺は篝火と一緒に行動すると決めたんだ」 「なんでそれをお前が決めるんだ」 「別にいいだろうが」 「篝火はこの中で一番まともだから、私とて偶には行動したいぞ」 「まともって、罪人にまともとかあるのか?」 思わず口を挟んだのは篝火。 「いや、お前が一番まともだ」 郁に断言された。隣では朔夜が何度も頷いて同意の意を示している。篝火はそうかなぁと首を傾げるが、斎が肩に手を置いて、そうだよ、と笑顔で語りかける。 「一応、元泥棒なんだけど」 「つか、現在も泥棒なんじゃねぇの?」 「失礼な。ちゃんと買い物はしている」 主にパン屋に。 「此処でうだうだしていても始まんねぇし。十七時に集合だ。いいな?」 「……ちっ、わかったよ」 郁は渋々引き下がり、斎と行動を共にすることを同意する。 「死んだらそんときゃそんときだな」 「さりげなく酷いこというんじゃねぇよ」 「だって、そんなものだろう。相手と殺し合うのなら」 「じゃあ、ご武運を」 そうして篝火と朔夜、斎と郁はそれぞれ白い集団を抹殺するために動く。 +++ 篝火と朔夜は街外れ――これ以上先に進めば街から出てしまう場所まで歩いた。朔夜の自宅から約三十分の距離にある。街の方へ視線を向ければコンクリートの建物が並ぶ。目の前に視線を移せば、砂と僅かな自然。此処は街と外の境界線。一歩踏み込めばそれだけで今までと違う景色が広がる。 この場所までやってきたのは、勿論考えがあってのこと。白い衣を着た集団が元々この街に住んでいる罪人だとは考えられなかったからだ。元々住んでいる罪人ならば、目撃者の誰かしらが見覚えのある可能性も零ではない。第一この街に住んでいるなら街を滅ぼす利点など到底考えつかなかったからだ。 最近この罪人の牢獄に堕とされた罪人で、砂の毒を知らずに街の外に存在する廃墟を拠点にしている可能性がある――それが篝火と朔夜の考えだった。 最も廃墟と言っても各地に転々としていて、大抵は住めるような代物ではない。何故街以外に廃墟が――存在するのか篝火は疑問に思ったことがあったが、それを深く追求したことはない。 [*前] | [次#] TOP |