第参話:白との出会いと再会 +++ 日は昇らない。 例え朝を迎えても、この街が太陽の光を浴びることはない。 「おはよう、珍しいねまだ10時を回った程度なのに」 すでに起床していた斎が、たった今部屋から出てきた朔夜に声をかける。 「てめぇらが、うるせぇからよく眠れなかったんだよ」 「それは俗に言う睡眠不足ってやつだね。睡眠は大切に。思考能力と判断能力が低下するからね」 「てめぇらのせいだってんだろがよ」 朔夜は眉を引きつらせながら、相変わらず人の癇に障ることしか口にしない斎に近づく。 「ちょー近いって顔」 「うっせぇ」 「いでっ」 近づいたまま、朔夜は頭突きをくらわせた。 「ちょー地味に痛いって、この石頭朔夜が!」 「いってぇ!」 今度は仕返しとばかりに斎は朔夜の足の指を踏む。 「仕返しだよ」 「おいこら、ちょっと待て。仕返しって明らかにこっちの方がいてぇじゃねぇかよ!」 頭突きのほうがまだ痛くないむしろ――こちらも痛いのだからと抗議する朔夜に斎は当たり前のように笑顔で言い返す。 「四倍返しが基本でしょ」 「どんな基本だ!」 「あぁ、でも安心して、君はいちおーの一応知り合いだから二倍で我慢してあげる」 「いちおーの一応知り合いって何だ!」 そんな知り合い程度のレベルなら帰れ今すぐ、二度とこの敷居を踏むなと抗議する朔夜に仕方ないなぁと斎は笑う。 「大親友の君だから許して二倍で」 「気色悪っ」 本当に、斎が言うと例えそれが本心だとしても胡散臭くて仕方なく思える。 それに、大親友だと言われる覚えはない。どちらかというと喧嘩ばかりしている。もっとも篝火に言わせれば喧嘩するほど仲が良いということになるのだろうが。 「本当に、自分で言っていて虫唾が走ってきちゃった」 あぁ、痒いといって自分の腕をさすり始める。 「オイ! どっちかというと今の言葉の方が腹立たしいぞ」 「わかっていっていますから」 本当に家を崩壊させてでもいいから、一遍地面の下に埋めたほうが気分爽快になるのではと思う。 [*前] | [次#] TOP |