T 自宅に篝火は帰宅する。泣いた形跡がないか確認してからだ。 部屋に入ると、香ばしい香りが漂ってきた。 「朔っ……」 「お帰り、篝火」 朔夜が数日ぶりに部屋から出てきたのだ。台所で料理を作っていた。 そして、朔の髪型を見て篝火は驚く。 腰より長かった髪の毛が今では肩までの長さに乱雑に切られている。 「朔っ!!」 「……悪かったな。俺が落ち込んでいたせいで、お前にまで余計な迷惑をかけて」 その顔には泣いた痕跡がくっきりとあった。けれど篝火は触れない。 朔夜が朔夜なりに時間をかけて、戻ってきてくれたのだから。 「朔……」 篝火はここ数日考えていたことを口にする 「夕日を見に行こう」 「!?」 朔夜は驚いて、思わずフライパンをひっくり返そうになり慌てる。 「皆、との約束を果たそう」 「……篝火」 「夕日、見に行こうぜ」 「うんっ!」 朔夜は精いっぱい頷く。力強く。 「あ、その前に髪の毛揃えてやるよ」 一つ、それは朔夜のケジメだったのかもしれない。自らの意思で長かった髪の毛を切ったのは。 「あっ……頼む」 しかし朔夜が自分で切っただけあって髪の毛は均等ではなく不揃いだった。 篝火は軽く苦笑しながら朔夜の髪の毛を整えることにした。 朔夜は手料理を急いで作り、二人で食べる。 何処かその料理はしょっぱかった。 けれど温もりのある温かい料理。 食べ終わり、朔夜の髪の毛を整えた後、その足で最果ての街へ向かう―― [*前] | [次#] TOP |