Z +++ 「泉君。この先は――エカルラートに続く道だよ。君が忌み嫌う国に、戻るのかい?」 最果ての街、そこをさらに奥深くに進んだ先にそこはある。 螺旋階段は、空に続くように――しかし、大地に向かい伸びている。 その場所に泉と、罪人の牢獄支配者銀髪が向かい合う。 ここは、罪人の牢獄と国が繋がっている二か所のうちの一か所。 もう一か所は、政府が罪人を堕とす場所であり、こちらは政府と取引する場所。 「郁を殺した、この場所に踏みとどまる意味はない」 「……君が、あちらに戻ったとしても安住の地は存在しな……いや、愚問だね。元々君には安全に過ごせる場所など存在しないか」 「……俺を止めるか? 罪人の牢獄創設者――虚偽」 銀髪――否、虚偽は微笑む。 「君が決めたなら、僕は止めない。漆黒を纏いし者――玖城泉よ、行け」 「あぁ」 螺旋階段を進む。 身にまといし雰囲気は、普段の二人とは一線を画する。 何人が、彼らを止められるだろうか、その気配におされ、思考が消えることなく。 「あらぁ、よかったの? 彼、逃がしちゃってぇ」 鎮静する雰囲気をぶち壊す、何処にいても変わらない、壊れた声が響き、狂恣が姿を現す。 「別にかまわないんだよ。どうせ。玖城は手に入らないんだから」 「まぁ、あの子の瞳に、映ることはないんでしょうねぇ」 「それに――」 「それにぃ?」 「白銀と密接な関係になる、俺に協力するつもりは、間違ってもないだろうからね」 壊された時は戻らないから せめて壊されていない時を壊し そして、狂え 永世の時が終焉を迎えるまで 一つ、一つ、失われていく光の中で 闇の浸食が、広がる 枷鎖に抗いながら、堕ちて行け何処まで何処まで―― 深紅・白銀・水碧・漆黒・翡翠・黄華・紫翠、七大貴族と政府が支配せし国“エカルラート”全ては、誰かの思惑と思惑が複雑に絡み合い、形勢を保つ [*前] | [次#] TOP |