Y 第一の街、泉は自身の家に向かう。 あるものを取りに来たのだ 部屋の中は、一部破壊されてあるものの、大部分は無事で、泉の部屋自体には特に何も壊れた部分はなかった。 泉の部屋の中は薄暗く、泉は電球に光を入れる。それでも、蛍光灯ではなく淡く光るそれは、そこまでの明るさを持っていない。ほのかに明るい空間を作り出すだけ。泉にとっては慣れたものだが、初めてこの部屋に来たものは、薄暗さを感じるだろう。光が届かない罪人の牢獄では、疑似の光を作る明かりで、せめてもと家の中を照らすものが多かったが、泉はそうではなかった。 泉の部屋の中は、書類で溢れていた。といっても几帳面な泉は、しっかりと整理整頓をしている。一見すると綺麗なだけだ。丁寧に分けられたファイルの中から、紙を取り出していく。 その紙に書かれてあるのは、泉が調べた情報について事細かに書かれていた。 例えば、この街の住民たちの過去にしてきた犯罪や武器、能力等詳細に書かれている。 それは、本人たち以外知りえないはずの情報。 この街ではほとんどフルネームで名乗ることがないはずなのに、各人のフルネームも記されている。 それだけで、見たものは泉の情報能力が規格外だと知らされるだろう。 そして、その情報は誰もが欲しがるような魔を持っている。 泉はそれを二種類に分けていった。片方を燃やす。暗黒の炎で。泉の手の平から発せられた黒い光は、炎となり、分けられた紙の山の片方を塵も残さず燃やす。そこには何も残らない。 初めからそこには何もなかったかのように。 そして、泉はもう片方を燃やそうと、手を伸ばしたが―― 「……」 泉は途中でその手を引っ込める。 残された片方の紙を部屋に残したまま、泉は自身が住んでいた形跡を跡形もなく消した。 泉が、最初からこの場所には存在していなかったかのように――情報の紙を一山残した以外 ――失わされたのなら、いる意味がない [*前] | [次#] TOP |