零の旋律 | ナノ

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「あぁ、信じられないし、もとより信じるつもりもない」

 全ては生まれた時から始まっていた
 全ては存在した時から廻っていた
 それが宿命ならば

「……悲しいな」
「俺が哀れだというか?」

 攻防は続く。篝火は接近戦に常に持ち込もうとし、泉は中距離に持ち込もうとする。
 それぞれが得意分野の領域で戦うために。それが、戦闘で有利なこと。

「あぁ、憐れだろ。……孤掌を鳴らし難しだろうが」

 断言する。一人で生きていくことが不可能だと知りながら、他者となれ合わない存在。

「……」
「お前を、お前を信じようとするやつらだって、いたんだ。なのに、お前が……っ」

 刀を扱う篝火の攻撃が雑になる。
 一心不乱となっていく

「お前がっ全てを拒絶したんだろっ、馬鹿が!!」

 篝火はポケットからあるものを取り出す。
 そして、それを勢いよく泉に投げつけた。泉は咄嗟にを右手で受け止める。
 受け止めたのを確認してか、しないでか、投げた篝火はすぐにその場から走り去った。

「……? なんだ、これは」

 泉は篝火の投げた四角い箱の中を開ける。
 箱には黒いラッピングが丁寧に施されていた。ご丁寧にリボンも黒だった。
ま るで、泉のためのもののように――

「……!? これは……」

 箱の中には、シルバーネックレスが入っていた。紫蘭の模様が施されている。そう、それはあの時篝火が、朔夜、斎、郁とお揃いで買ったものと全く同じものだった。

「俺に渡すつもりだったのか、これを」

 泉は顔に手を当てる。
 知っていた
 篝火が紫蘭のネックレスを五つ購入していることは。
 そして、そのうち四つを、篝火たちがつけていることも
 けれど、知らなかった。
 篝火が泉に渡すものとして買っていたことを
 黒くラッピングされたそれは、まぎれものなく泉へのものだった。

「……馬鹿はそっちだろうが」

 ――裏切ったのはこちらだ
 ――なのに、何故まだ、こちらを信じようとする
 ――例え、誰も味方だと思っていなくても、何故信じようとする。何故、友達でありたいと願う


「結局人は大切な人の為にしか動けないんだな、俺もお前らも」

 一人榴華は呟く。


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