X 「あぁ、信じられないし、もとより信じるつもりもない」 全ては生まれた時から始まっていた 全ては存在した時から廻っていた それが宿命ならば 「……悲しいな」 「俺が哀れだというか?」 攻防は続く。篝火は接近戦に常に持ち込もうとし、泉は中距離に持ち込もうとする。 それぞれが得意分野の領域で戦うために。それが、戦闘で有利なこと。 「あぁ、憐れだろ。……孤掌を鳴らし難しだろうが」 断言する。一人で生きていくことが不可能だと知りながら、他者となれ合わない存在。 「……」 「お前を、お前を信じようとするやつらだって、いたんだ。なのに、お前が……っ」 刀を扱う篝火の攻撃が雑になる。 一心不乱となっていく 「お前がっ全てを拒絶したんだろっ、馬鹿が!!」 篝火はポケットからあるものを取り出す。 そして、それを勢いよく泉に投げつけた。泉は咄嗟にを右手で受け止める。 受け止めたのを確認してか、しないでか、投げた篝火はすぐにその場から走り去った。 「……? なんだ、これは」 泉は篝火の投げた四角い箱の中を開ける。 箱には黒いラッピングが丁寧に施されていた。ご丁寧にリボンも黒だった。 ま るで、泉のためのもののように―― 「……!? これは……」 箱の中には、シルバーネックレスが入っていた。紫蘭の模様が施されている。そう、それはあの時篝火が、朔夜、斎、郁とお揃いで買ったものと全く同じものだった。 「俺に渡すつもりだったのか、これを」 泉は顔に手を当てる。 知っていた 篝火が紫蘭のネックレスを五つ購入していることは。 そして、そのうち四つを、篝火たちがつけていることも けれど、知らなかった。 篝火が泉に渡すものとして買っていたことを 黒くラッピングされたそれは、まぎれものなく泉へのものだった。 「……馬鹿はそっちだろうが」 ――裏切ったのはこちらだ ――なのに、何故まだ、こちらを信じようとする ――例え、誰も味方だと思っていなくても、何故信じようとする。何故、友達でありたいと願う 「結局人は大切な人の為にしか動けないんだな、俺もお前らも」 一人榴華は呟く。 [*前] | [次#] TOP |