T ――大切だと何故認めない? 何度も繰り返された言葉。 ――大切だと認めたら前に進める? 胸が苦しい。 数日前。砌と悧智がその場から姿を消した後、蘭舞と凛舞に雛罌粟と朔夜を頼んで篝火は、第三の街に向かって走っていた。この中で体力が一番あるのは篝火だ。 朔夜は強がってはいるが、心身が疲れきっている。これ以上無理をさせるわけにはいかない。 「……っ!!」 篝火はその途中で見てしまった。 白い衣を掛けられ横たわる由蘭と斎、そして斎の隣に手を繋いで横たわる烙の姿が。その三人の表情は何処か安らかだった。 篝火は思わずそっぽを向いてしまう。 唇を強く噛みしめ、拳を強く握り締める。 唇からは血が流れるが、それでも強く強く噛みしめる。 精一杯泣かないように。 「馬鹿だろ……」 篝火の肩が震える。 「馬鹿だろ……」 同じ言葉を繰り返し、篝火は斎たちに近づく。 「皆で……夕日見る約束したじゃないか……」 あの時の最後の笑顔が篝火の脳内に再生される。何度も何度も。 「馬鹿っ……」 白い衣を篝火は強く握り締めた。 ――へぇ、君、篝火っていうんだ。俺は斎宜しく 出会った時に交わした握手。手の温もりを求める ――馬鹿だな、私は……信じてみたいだけだ もう、話すことも出来ない [*前] | [次#] TOP |