零の旋律 | ナノ

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「だからさ、僕らで政府が更生出来るように、罪人の牢獄を無くしてあげようよ」

 甘い甘い蜜の誘い。
 罪人の牢獄に犯罪者を送り放置するのではなく、政府が罪人に裏の仕事を任せるのではなく、法廷の場でその罪を自覚させ、その対価――罰を与える。その仕組みを作り上げればいい。そうすれば罪人の牢獄は不要となる。
 その為には、罪人の牢獄を滅ぼせばいい。

「どうだい?」

 白圭の意思を尊重するため、水波は再度確認する。
 心の中では、白圭は間違いなく自分の手を取ると確信していても。
 白圭の心はすでに決まっていた。白圭は水波の手を取る。
 その後、水波は白圭に白き断罪へ戻り通常業務をこなすように指示をした。長年培われてきた闇はそう簡単に滅ぼすことは出来ない。入念な下準備が必要だと、白圭に伝える。
 そうして五年の月日が流れた。

 白圭は白き断罪の仲間とともに、罪人の牢獄に乗り込んだ。
 何処から何処までが水波の思惑通りで、予定通りだったのかは誰もしらない。
 ただ、白圭にはわかることがあった
 ――この牢獄は……
 その言葉を最後まで呟くことはない。
 思うだけの力も残されていなかった。己の灯が消えていくのを実感する。
 そこにある感情は、怒りか、絶望か、悲しみか、嘆きか、悲嘆か一体何の感情を抱いたのだろうか――


+++
 第二の街建物屋上
 砌と悧智は戻ることを決意した。この争いは自分たちの負けだったと。敗北を認めた。

「足掻かないのか、お前は」

 悧智は砌に問いかける。

「例え足掻くとしても、私が足掻く場所は此処ではないわ。別の場所で私は足掻く。貴方こそいいのかしら?」
「何れ足掻くさ。だが、今の俺では無理だ、力量不足を実感したよ。……何れこの大地を滅ぼす(なぁ白圭。お前の想いは――)」

 悧智と砌は舞、柚葉、悠真を抱えたまま悧智の術で罪人の牢獄を脱出した。
 一つの物語が始まり、一つの物語は終焉を迎えていた。

 この日、白き断罪は罪人の牢獄から姿を消した。


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